映画音楽「五日五夜」作品111/111a

シナイスキー指揮/BBCフィルハーモニック

2004.10.12-13 Chandos

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ショスタコーヴィチの映画音楽は「馬あぶ」や「黄金の山脈」、「ピロゴフ」など魅力的な作品が並ぶ一方で、作曲者本人が仕事と割り切って愚痴をこぼしつつも仕方なしに作っていたという話も伝わっている。この「五日五夜」も「頑張ってはいるが何も出てこない」という内容のコメントが残っている。作品番号111なので、前後には弦楽四重奏曲第8番や交響曲第12番、第13番などの傑作があり、割り切った仕事だったのだろうと想像できる。アトヴミャーンによる組曲版は、序奏、「廃墟のドレスデン」、「ドレスデン解放」、間奏曲、終曲の5曲からなる。このシナイスキー盤は5曲揃っており、録音の少ない同曲において、シャンドスの素晴らしいスタジオ録音で聴くことができる貴重な一枚。BBCフィルによる骨太な演奏で、どっしりとパワー系の音色を聴かせてくれる。既出のディスクと比べて圧倒的に録音が良く、奥底まで密度の濃い音色は、ショスタコーヴィチの映画音楽の魅力に改めて気付かされる。シナイスキーによる映画音楽の録音は全3巻、11曲をこのクオリティで聴くことができる。

セレブリエール指揮/ベルギー放送交響楽団

1987.06 Warner

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セレブリエールによる映画音楽集からの一枚。87年の録音だが、同音楽集の他の演奏と同様に、録音状態は良いとは言えない。セレブリエールの魅力は、絶妙なテンポ感や、過剰な演出のない堅実な構成にあると思っている。この演奏も、セレブリエールの良さが生きた一枚。そしてティンパニの活躍が心地良い。決して大音量でもないのだが、小気味良くビシバシと決まる様が素晴らしい。残念ながら抜粋版(2-5曲)だが、ベートーヴェンの第九が流れる「ドレスデン解放」は収録されており、キレのある素晴らしい演奏を聴かせてくれる。

フェドセーエフ指揮/チャイコフスキー記念交響楽団

2006.08.21-23/Live Relief

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まさか「五日五夜」をライブ音源で聴くことができるとは。しかも交響曲第15番とのカップリングだ。「五日五夜」をコンサートのプログラムの一つとして聴くことのできる一枚であり、単なるプロパガンダ映画の劇伴以上に演奏効果の高い魅力的な曲であることがよくわかる。フェドセーエフとモスクワ放送響の名コンビによる重厚な演奏で、満足度が高い。序奏、「廃墟のドレスデン」、「ドレスデン解放」の3曲。スネアが解放感たっぷりに鳴っていて、ぜひ会場で聴きたい演奏。

クチャル指揮/ウクライナ国立交響楽団

1995.02 Naxos

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ナクソスを廉価レーベルと思ってあなどってはならない。併録の「馬あぶ」も素晴らしいクオリティで、私がナクソスのファンになった一枚。各楽器のバランスも素晴らしく、この曲を知る上では最初に手に取るべき一枚と言える。

ジャッド指揮/ベルリン・ドイツ交響楽団

1990.01.22-23 Capriccio

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私が初めてこの曲を聴いたのは、同レーベルから出ていた映画音楽集「MOVIE MADNESS」。ショスタコーヴィチの映画音楽との出会いであった。当盤から「ドレスデン解放」を収録。まさかの第九に驚いたものだ。豪快に鳴らすだけ鳴らしておいて、何ごともなかったかのように一瞬にして余韻も残さず立ち去る。これがショスタコらしいということなのかもしれない。なお、オケ名は、当盤では英語表記でBerlin Radio Symphony Orchestraとあるのみだが、「MOVIE MADNESS」では独名のRadio-Symphonie-Orchester Berlinとあるので、ベルリン放送交響楽団ではなく、ベルリン・ドイツ交響楽団のことだと思われる。