映画音楽「ハムレット」作品116/116a

「ハムレット」と「リア王」は劇付随音楽と映画音楽がそれぞれ作曲されており、こちらで情報を整理しています。

クチャル指揮/ウクライナ国立交響楽団

2001.06.01-08 Brilliant

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ブリリアントから発売されたクチャルの管弦楽曲集3枚組の中で、「ボルト」と並んで最も興味惹かれる演奏。映画版「ハムレット」は劇版と違ってシリアスな内容を持つが、暗く重くならずに、明解でまとまりのあるオーケストラのサウンドが心地良い。ただでさえ録音が少ない曲で、名盤を求めるなど贅沢かと思われていたが、ついに我々の願いは叶った。激しく炸裂する打楽器と金管。演奏全体が凄まじいヴォルテージ。オーケストラの力不足は否めないものの、表現の方向性として真っ直ぐな力強さがあり、個人的な好みから言えばショスタコーヴィチの管弦楽曲作品はこうしたサウンドで聴きたい。映画版ハムレットなら、間違いなくこの一枚だ。1曲目の序奏から素晴らしいスネアの活躍が聴かれ、7曲目に配された「毒殺の場面」など最高じゃないか!

ヤブロンスキー指揮/ロシア・フィルハーモニー管弦楽団

2003.02 Naxos

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全曲の録音。そして演奏のクオリティも素晴らしく、残響を抑え気味のややデッドな録音で、ミシミシとした濃密な響き。短い残響とめり込むような深い音色が素晴らしい。いや、しかし、映画版ハムレットを60分のアルバムで聴くときがきたか…。この世界観に浸りたいものよ。チェンバロ独奏の第19曲「オフィーリアの狂気」などは貴重。ゾッとするような感動がある。「毒殺の場面」以降は組曲版では「決闘」まで聴けないが、それまでの第18曲「狂っていくオフィーリア」から第22曲「墓地」まで、まるでホラー映画のような響きと共に(または宗教的か)、ショスタコーヴィチによるハムレットの世界観がある。これを聴いてしまうと、やっぱり組曲版では足りないな、と思ってしまう。

セレブリエール指揮/ベルギー放送交響楽団

1986.09 Warner

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80年代の録音だが、どこか平板でそれほど良いとも言えない中、鋭くグサグサと刺さるような切れ味ある演奏。スピーディかつテンポ感も抜群で、全曲を駆け抜けるように聴くことができる。 「毒殺の場面」は、毒殺するにはいささか目立ちすぎじゃないか、という感じだが、感情表現なのでこれでいいのだろう。強烈な音色。全体的にキンキンとした響きで、強奏部ではヒステリックな音色も。シンバルやトライアングル、タンバリンのジングルなど金属系の響きが耳に痛く、私は好き。

ラビノヴィチ指揮/モスクワ放送交響楽団

1964  Great Musicians of Palmira Du Nord/Melodiya

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どこで入手したのか覚えていないのだが、ディスクユニオンを回っているうちに手にしていたのだろう。メロディヤが原盤という情報はあるものの、ロシア語が読めない私にはレーベルの詳細も判然としない一枚。モーツァルトやベルリオーズと併録されている映画版ハムレット(何という組み合わせ)。第6曲「役者たちの到着」が未収録の7曲の抜粋。カットもある。録音は良くはないが、当時ソ連の録音特有の感動があり、荒々しくもスピード感があり、どこか乾いた響きがむしろ好き。真っ直ぐで、まとまっていて、皆で一つの方向に突き進むソ連オケの格好良さを堪能できる。劇伴というよりも、一つの管弦楽組曲として説得力を持った演奏。モーツァルトの25番のあとにもよく似合うと思う。

シナイスキー指揮/BBCフィルハーモニック

2004.10.12-13 Chandos

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シナイスキーの映画音楽集完結編の3枚目。名盤である。かゆいところに手が届く、ゆとりのある演奏。同曲はクチャルの演奏が素晴らしいが、どこかいっぱいいっぱいな感じ(それはそれで魅力の一つ)なのに対し、ぶわ~っと大音響。大袈裟な表現も含めて格好良い。映画音楽はこうありたいところ。特徴的な名盤がある中では地味なので、他の推薦盤と比べると目立たない。

グリン指揮/ベルリン・ドイツ交響楽団

1988.11-12 Capriccio

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他の推薦盤と比べると、これだという決定打に欠けるものの、全曲を通してまとまっており、スタンダードな一枚。鮫島奈津子氏の日本語解説もありがたい。なお、併録の「馬あぶ」の方にも書いたが、オケ名は日本語盤のジャケットやライナーにはベルリン放送交響楽団とるものの、カプリッチオの「MOVIE MADNESS」には独名Radio-Symphonie-Orchester Berlinとの表記であり、そうであれば西側のベルリン・ドイツ交響楽団。

シャイー指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

1988.05.06,19,22 Decca

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シャイーのコンセプト・アルバムから。それにしてもこのシリーズは面白い。私が聴き慣れたショスタコーヴィチの響きとは全然違うのだが、当盤もコンセルトヘボウの素晴らしいサウンドを聴くことができる。アトヴミャーンの組曲版ではなく、抜粋による。主要な曲は含まれている。