劇付随音楽「リア王」作品58a

「ハムレット」と「リア王」は劇付随音楽と映画音楽がそれぞれ作曲されており、こちらで情報を整理しています。

ロジェストヴェンスキー指揮/ソビエト国立文化省交響楽団

ブルナシェフ(S),ネステレンコ(Bs)

1984 BMG/Melodiya

('◎')('◎')('◎')('◎')('◎')

ロジェストヴェンスキーのBMG全集には多数の交響曲以外の作品が収められているが、劇の「リア王」がこのような名演として記録されているとは。残念ながら「コーデリアのバラード」と「10の道化の歌」のみだが、やはり我々が聴くにはこれが決定盤ではなかろうか。間違いない。それにしても「10の道化の歌」の第1曲目のジングルベルの旋律による歌曲は面白くて、こうしてシェイクスピア作品を当時ソ連で表現するとこういうのもありだよなという説得力がある。ぜひファンファーレも収録してほしかった。ロジェヴェンとソビ文なら我々が望む全てを叶えてくれそうである。それが叶わぬ今、「コーデリアのバラード」と「10の道化の歌」以外の曲はネルソンスを聴こう。

ネルソンス指揮/ボストン交響楽団

2017.05/Live Deutsche Grammophon

('◎')('◎')('◎')('◎')('◎')

ソプラノをクラリネットに編曲し、次の順番で構成された、言わば「ネルソンス版組曲」である。「序奏とコーデリアのバラード」、ファンファーレ第1番、「狩からの帰還」、ファンファーレ第4番、「嵐の接近」、「荒野の情景」、ファンファーレ第2番、「盲目のグロスター伯」、「野営地」、ファンファーレ第5番、行進曲。録音が少ないこともあって聴き比べの機会に乏しい作品だが、このネルソンス盤の圧倒的な迫力には他盤が霞む。全体で約14分にまとめられており、同曲の魅力が凝縮されている。各ファンファーレや「嵐の接近」などはショスタコーヴィチの管弦楽曲に聴かれる迫力、金管や打楽器の存在感に息を呑む。ネルソンスの交響曲シリーズと同様、キラキラと輝くような素晴らしいオーケストラの響きを堪能できる。

M.ユロフスキー指揮/ベルリン放送交響楽団

ザレンバ(MS),スレイマノフ(Bs)

1990.12.10-13 Cpriccio

('◎')('◎')('◎')('◎')

劇付随音楽「リア王」は面白い構成で、5曲のファンファーレ、2曲の声楽曲「序曲とコーデリアのバラード」、「10の道化の歌」、そしてその他の部分的な短い劇伴だ。組曲が編纂されていないこともあり、残念ながらコンサート用の音楽作品としてまとめて聴くことができない。当盤は、全曲が収録された貴重な一枚。短い曲を集めた内容になっているが、その一つ一つに実に濃密な作品世界を感じることができ、特にファンファーレはショスタコーヴィチらしさがよく表れている。当盤は映画版とも同時収録なので、聴き比べも面白いだろう。ショスタコーヴィチは、劇や映画でのコージンツェフとの仕事を楽しんでいたようで、録音数は少ないながら、やはりショスタコーヴィチ作品として心惹かれるのである。

エルダー指揮/バーミンガム市交響楽団

ウィンター(MS),ウィルソン=ジョンソン(Br)

1994.06.13-15 Cala

('◎')('◎')('◎')

全曲。オーケストラはなかなか良い。全体的に線が細くサウンドが薄いが、ヒステリックに鳴る強奏部などは聴き応えがある。ファンファーレとスネアも素晴らしい。一方、声楽曲がどうにも薄い。特に「10の道化の歌」は臨場感あふれる茶目っ気がほしいものだが、小さくまとまった感じが惜しい。

レヴィン指揮/モスクワ室内歌劇場管弦楽団

モチャロフ(Bs)

1995.11 Triton

('◎')('◎')('◎')

声楽曲2曲を収録。モチャロフによる歌曲集というアルバムなので、そのコンセプトからか「コーデリアのバラード」もモチャロフが歌っている。まったりとした演奏で全体的に軽め。それにしてもこのモチャロフの歌曲集、ひと昔前の分厚い2枚組CDのケースに入っているのだが、中身は1枚。イギリス詩人、レビャートキン、クロコディール、そして貴重な反形式主義的ラヨークが収録されている。