バレエ音楽「ボルト」 作品27

バレエ音楽「ボルト」には、全曲版の他に、8曲版の組曲(1931版)、6曲版の組曲(1934版)が存在します。その違いについては、こちらで解説しています。

クチャル指揮 ウクライナ国立交響楽団

2001.06.01-08 Brilliant

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6曲版。「ボルト」に関しては、クチャル盤をかなり評価したいと思う。序曲などは他の推薦盤と比べて迫力に欠けるが、何といっても「タンゴ」!カッコ良すぎる!どうしてくれよう、この気合い入りまくりの演奏。熱演!という言葉がまさに相応しい。クチャルはNAXOSでカリンニコフを一躍有名にさせた印象があるが、「馬あぶ」や「五日五夜」を入れた人でもある。当盤は、その頃の丁寧なイメージとは違った激しい演奏だ。オケも非常にアグレッシブな演奏で、ロジェヴェンを彷彿とさせるような下品さがある。ちょっとパワー不足でロジェヴェンほどの破廉恥さはないものの、「やっぱショスタコってこれだよな」という納得の演奏。6曲版なのは残念。

シャイー指揮 フィラデルフィア管弦楽団

1995.12.07,09 DECCA

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6曲版。抜群のキレと勢いが心地良く、華々しい演奏。このディスクはショスタコーヴィチのバレエ音楽を「ダンス・アルバム」というコンセプトでまとめた一枚だが、解釈は単純明快で、「ダンス」というにはあまりに激しく息切れしそう。しかしながら、シャイーの振るフィラデルフィア管である。このコンビのショスタコーヴィチはこうも華麗な演奏になるのかと、思わず笑ってしまった。細部までコントロールされ、遊び心のある極端なダイナミクスや場面転換は、オーケストラの余裕ある技量を味わうことができる。特にフィナーレのはじけっぷりは最高で、冒頭からのぶわ~っと広がる大音量には鳥肌が立つ。

ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団

1982.04.10/Live Brilliant

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抜粋版(1・2・5・7・3)。よくぞやってくれた!これぞロジェヴェン流の「ボルト」よ!なんだか最近「ボルト」もそれなりに演奏されるようになってきて軟派な演奏が溢れておるが、ティンパニはここまで叩かなきゃいかんし、ラッパはここまで吹かなけりゃいかん。トロンボーンはぶりぶり鳴らして、油断できない木管の猛攻も耐えしのがなければならんぞ。なお、当盤の抜粋および曲順は1・2・5・7・3で、他のライヴでも第3曲「御者の踊り」(変奏曲)をラストに配置している。この5曲のみを取れば極めて充実度の高い演奏ながら、やはり取り残された3曲、特に「タンゴ」がないのは残念。このテンションで8曲やってくれたら、何も言うことはないのだが…。今からでもお願いします、ロジェヴェン先生。

M.ショスタコーヴィチ指揮 ボリショイ劇場管弦楽団

1966 BMG

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8曲版。1966年のマクシムはスゴイ!激演のボルト。こういうポップスめいた曲の方がマクシムは映えると思われる。いやらしいほどのオーバーな表現で面白い。ド演歌というかクサメタルというか…、こ、好みです。

N.ヤルヴィ指揮 スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

1988.05.14 CHANDOS

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8曲版。やや薄い響きではあるものの、力強い演奏。スクエアに広がるシャンドス&ヤルヴィの響きは安定して好き。こってりとした濃厚な充実感は得られないものの、ヤルヴィらしいすっきりとスピード感あるアプローチは他に代え難い。

キタエンコ指揮 MDR交響楽団

2005.05.17-20 CAPRICCIO

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8曲版。交響曲全集とはオケは違うものの、キタエンコのサウンド作りは同じ方向である。この音質で聴く「ボルト」は、とても贅沢な響き。しっかりと全てのパートが十分なほどに鳴らされており、実に細部まで丁寧に仕上げられている。ただ、真面目すぎるような。どうもマクシムやロジェヴェンで慣れた耳には安全運転すぎて、「ボルト」ってもっとハラハラしながら聴く音楽だよなぁ、と。

ロジェストヴェンスキー指揮 ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団

1994.06 CHANDOS

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全曲版。組曲版にはない曲が盛りだくさんなので、ショスタコファンは必聴の一枚である。中でも最もチープな1幕1曲目の「体操」が笑える。この盤では、ロジェストヴェンスキー自身によるピアノと声で体操できる。ロジェヴェンの声は高すぎず低すぎず、とても引き締まった声でかなりカッコイイ。みんなでボルト体操だ!それはさておき、組曲版に収められている曲を聴き比べてみても、良い録音であることが分かる。さすが我らがロジェヴェン。序曲のスネアが爆音で楽しい。

ロジェストヴェンスキー指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

1983.01.07/Live GPR

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抜粋版(1・2・5・3)。珍しいチェコ・フィルとのライヴ録音。80年代のチェコ・フィルが本当にこんな音色なのかは不明だが、解釈は前年のソビ文とのライヴと同様。「御者の踊り」も最後に配置。ややもっさりとした感があり、アクセントがバシッと決まりきらないものの、非常に楽しく聴かせてくれるのはロジェヴェンならでは。

N.ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団

1998.08 Deutsche Grammophon

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8曲版。どこか暗い響きを持つエーテボリ響のショスタコ。ロジェヴェン盤とはまるで違う演奏だが、模範的な演奏かと思う。やはり打楽器が良い。ティンパニがやや丸いのが惜しいが、サスペンデッド・シンバルなどは良い音を聴かせている。

ロジェストヴェンスキー指揮 BBC交響楽団

1987.08.17/Live BBC

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抜粋版(1・2・5・3)。BBCとのライヴ録音で、他のロジェヴェン先生の録音と比べても同じような解釈で爆発力が魅力だが、細部においてもうひとつ勢いに欠けるところがある。他の録音が強烈すぎるということもあるが…、ロジェヴェンのボルトを聴くならばわざわざこの盤を選ぶ必要はないといったところか。

ヤブロンスキー指揮 ロシア国立交響楽団

2001.10 NAXOS

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8曲版。まるでカタログのような演奏で、強烈に心に響いてくることはないが、BGMに徹しているという点では一つの録音としてありだと思う。つまり、組曲全曲版のディスクがそれほど多くはない中で、「可もなく、不可もそれほどなく」という録音があってもいいだろうということ。よって、たこさん三つながら掲載しておく。ちなみに、オケはロシア国立交響楽団と日本語表記されていたが、我々のよく知るスヴェトラーノフの国立響とは全く違うオケであることは明白。ロシアはすぐに「ステート」とか「アカデミック」とか付けるのでややこしい。日本とは「国立」の概念が違うのだ。むしろ、元のロシア語を「国立」と訳してはいけないのだろう。やれやれ。