交響曲第9番 変ホ長調 作品70

コシュラー指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

1981.03.13/Live PRAGA

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このコシュラー盤は完全に私の趣味で選出したディスクなので、あまり参考にならないかもしれない。私にとってこの盤が魅力的に思えたのは、高めのピッチで硬質な音色のスネアである。特に3楽章の、まるで11番かというような強打が気に入ってしまって、もう完全に洗脳。他のスネアが聞けなくなってしまうという病気に罹った。ヤルヴィ盤でさえも可愛く聞こえてしまうのは重症だ。というわけで、このアンバランスなスネアがとにかく魅力的。

M.ショスタコーヴィチ指揮 プラハ交響楽団

2003.04.07-08/Live SUPRAPHON

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微妙に不安定なテンポにハラハラしながらも、最後まで楽しく聴ける演奏。弦楽器の音程の悪さとかは、もうここまでくると誰も何も言えん。そういうのはまあ別にいいことにして、音楽の流れを聴いてみよう。これは好みによるものかもしれないが、9番って軽妙である必要はないんだと思う。むしろそうではなくて、もっと硬質な響きが重要なのだ。それは4楽章などの重いところだけではなく、1楽章とか3楽章に関しても。ムラヴィンスキーは9番の録音を残していないが、演奏はしている。ムラヴィンスキーはどう振ったのかな、なんて考える。マクシムみたいになってたりして、とまでは思わないけれど、似た部分はあるかもしれない。それにしてもスネアがカッコイイのう。5楽章のラストなんて、やっぱりこれも爆裂のしどころが人とズレてるとしか言いようがない。

スヴェトラーノフ指揮 ソビエト国立交響楽団

1978 Venezia

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これだ!これぞソビエト・パワー全開のスーパー・ハイテンション。やはりこのぶりぶり金管とガリガリ弦、脳みそ直撃の木管が魅力なのである。耳が痛くなるようなこの音色に快感を感じるのは、もうすっかりスヴェトラーノフ・マジックにかかった証拠だ。わずか4分40秒で駆け抜ける怒涛のような1楽章。暴走列車のごとき強引さと凶悪さに、痛快な思いをすること間違いなし。9番がどんな背景の下に作曲されたのか、それは有名な話である。しかし、そんな諧謔性や皮肉、嘲笑はお構いなし。とことんパワーを見せ付ける。すると不思議なことにショスタコーヴィチの天才的オーケストレーションが炸裂して、もの凄く面白い音楽になる。色んな聞かせ方があるのだなぁ、とショスタコーヴィチの幅を改めて感じさせる名演奏。Veneziaからのリマスタ盤を推す。

ノイマン指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

1974.09.16-17 SUPRAPHON

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チェコ・フィルの響きが第九と合っているのか!?よくはわからんが、スネアに惚れたコシュラー盤だが、チェコ・フィルといえばノイマン。やっぱり素晴らしい。こういう軽妙な曲には、それに反逆するかのような渋い響きがいいのかもしれない。ヤルヴィの明るくてパリッと鳴りまくる演奏が、どこかあまりにも予想通りで飽きてしまうのに対し、チェコ・フィルは飽きのこないコクがある演奏。とりあえず、ティンパニのデッドな音程と音色にぞっこんです。

N.ヤルヴィ指揮 スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

1987.04 CHANDOS

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実によくメリハリの利いた、幾分暴力的とも言える演奏。強奏部の炸裂ぶりが気持ち良い。4楽章では真価を発揮。9番をここまで大鳴りさせるとは。ヤルヴィのショスタコはいずれも素晴らしい出来で、特にこの9番以降、後期交響曲はコンドラシンやムラヴィンスキーに匹敵している。このディスクに併録されている「祝典序曲」、歌劇「カテリーナ・イズマイロヴァ」組曲、「タヒチ・トロット(二人でお茶を)」も、いずれも素晴らしい。

ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団

1983 BMG

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ロジェヴェンによる9番は、ブラック・ユーモアに満ちている。なぜこうも健全でない暗さを持っているのだろう。オケの鳴りを考えると、ヤルヴィ盤も非常に良いのだが、やはりショスタコらしさの点でこちらが上か。もともと、底抜けに明るい曲はあまり書かないのがショスタコだ。アホッぽい曲でもどこか暗い部分を秘めているというか、それが決してシリアスなものではなくとも、麻薬中毒患者的な不健全さがあるのだ。打楽器に関しては、緩いスナッピのスネアはいつも通りだが、ティンパニの音が少し遠い。もう少しクリアに抜けるとよかったのだが…。

コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

1965 BMG

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コンドラシンならではの抜群のテンポ感覚が素晴らしい。5楽章のタンバリンがまた素晴らしい。タンバリンの(鈴ではなく)ヘッドの音を聴かせている演奏は、なかなか聴くことができない。パン、パンと気持ち良く決まる。

キタエンコ指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

2002.04 CAPRICCIO

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安定したキタエンコ全集にしては若干危うげなテンポ感覚が漂う1楽章は頼りないのだが、その後の楽章は充実している。特に3楽章以降は、金管のパワーもありなかなか聴かせる。ティンパニやスネアも好演している。キタエンコ全集の特徴でもあるかもしれないが、打楽器群は前線まで出てきて強烈に自己主張するようなことはない。しかし、それでもある一定のラインのところで防御を固め、職人的に伴奏に徹している。決して埋もれるようなことはないし、常にタッタカタッタカとコントロールされたバランスで鳴っている。音質の良さは言うまでもなく、高音から低音まで目まぐるしく動き回るこの曲を、とっ散らかせずにしっかりと落ち着いて聴かせる。

バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

1965.10.19 SONY

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堅実なテンポとアンサンブルで、しっかりとした丁寧な造形を見せてくれる素晴らしい演奏。このバーンスタイン盤こそベストだ、という方も多いだろうと思う。バーンスタインのショスタコーヴィチ演奏では、例えば6番などにも共通して言えることだが、意外なことに結構重めのゆったりしたテンポがとられ、その軽妙で快活な要素は薄められている。

カエターニ指揮 ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団

2003.02 ARTS

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カエターニの華やかな音色には、9番はよく似合っている。1楽章などはややもったりしたテンポなのだが、厚みのあるアンサンブルは素直に美しいと感じられる。3楽章の打楽器が多彩な響きで、大変面白い。

バルシャイ指揮 ケルンWDR交響楽団

1995.07.12-14,09.14&1996.04.26 Brilliant

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バルシャイのショスタコーヴィチ演奏は深い闇に覆われているが、9番も例外ではない。不気味というほどではないが、どこか払拭できない闇を感じるのは確かで、ある種の張り詰めた硬質な響きは独特で魅力的。5楽章のラスト、駆け込むようなサーカス状態になりがちだが、バルシャイはひたすら真面目。彼はこの曲に何を見ているのだろう。