交響曲第7番 ハ長調 作品60 「レニングラード」

スヴェトラーノフ指揮 ソビエト国立交響楽団

1968 SCRIBENDUM

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2種のスクリベンダムからのスヴェトラーノフ7番のうち、スタジオ録音盤。スヴェトラーノフのショスタコ、というのもなかなか不思議な魅力に満ちている。交響曲では7番こそスヴェトラに似合いそうだが、ここではスヴェトラ語法が大炸裂。見事に期待に応えてくれている。1楽章の「戦争の主題」は特に秀逸。これでもかというほどに音量が増し、もう120パーセント、というところまで早くから到達するが、その先もさらにクレッシェンドは続く。スピーカーが壊れるかと思うほど超高密度の大音量。そしてアッチェルをかけていき、オケはとにかくもう、すごい混沌状態。スネアの音量も凄まじい。大洪水に飲み込まれ、もう何が何だかわからない。何人たりとも、この演奏を聴いて平然としてはいられまい。スクリベンダムよりリマスタリングされて発売されたが、既出のものより遥かに音質が良い。まるで違う演奏かというほどの迫力。この演奏への評価はさらに高まるに違いない。78年ライヴ盤と対をなすジャケット写真も素晴らしい。ソビエトの寒々とした写真の中に、御大の姿が混ざっている。後ろの炎も、この演奏をよく表している。スクリベンダム最高!と喝采したくなる。こんな技術があるなら、コンドラシン全集を全部リマスタリングしてくれ!!と声を大にして言いたい…。

スヴェトラーノフ指揮 ソビエト国立交響楽団

1978.02.28/Live SCRIBENDUM

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2003年8月にスクリベンダムより2種のスヴェトラ7番が発売された(このレビューを書いているまさにその日である)。68年スタジオ盤と、今回が初出になるこの78年ライヴ盤である。68年盤の凄まじさはよく知られるところで、かねてより楽しみにしていたが、これは予想を遥かに上回る超強烈な爆演!まず、1楽章冒頭のティンパニからしてよく響く大音量で感動。オケ全体もかなり鳴っていて大迫力。「戦争の主題」は68年盤よりもゆっくりとしたテンポで、最初の「ちちんぷいぷい」は可愛らしいぐらいだが、しかしやはりやってくれた!怒涛のアッチェル!最終的にはかなりのテンポまで上がっていき、音量はもの凄いところまで行き着く。凄すぎる。「ぷいぷい!!」が徐々に恐怖の行進に変わっていく様は、鳥肌が立つ。各楽器とも吼えており、スネアは勢いあまってリム・ショットが入る場面も。3楽章は、まさに鬼気迫る衝撃的爆演と、繊細な歌が混在している。ピアノは限りなく小さく、フォルテは限りなく大きい。このダイナミックス・レンジの広さは、他のどの録音、どんな曲であろうともそうそう聴くことはできまい。それにしても、この金管の大炸裂ぶりはスヴェトラ録音の中でもトップ・レベルに違いない。ヴィブラートも健在。4楽章に入ると、オケが疲れているのか乱雑になっていく感があるが、それでも怒涛のごとき流れは止まらない。最後の最後までこのテンションを維持し続ける。後半ではたっぷり休んだ金管・打楽器群が再び大音量で攻めてくる。大砲のようなティンパニ、大太鼓、終始ぶりぶりと唸り続ける金管。最後はかなり遅めの重いテンポで、とても人間が吹いているとは思えない。スヴェトラ・クレッシェンドは一体どれだけ伸ばしているのか…。測ってみよう…、14秒だ!長い。卒倒しそうである。ライヴゆえのミス、アンサンブルの乱れも散見されるが、この大迫力の前ではそんなものまったく些細なことだと思える。そういえば、1楽章で「ぷいぷい」に合わせて咳をしている人がいた。寒そうなジャケット写真もかなり良い味を出している。68年盤との甲乙は付け難いが、その演奏のあまりの激しさゆえに、「やり過ぎ」として68年盤の方を一応上に載せておいた(3楽章はもう少し綺麗に演奏してほしいな、と思うし…)。

ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団

1984 BMG

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とても感動的なスケールの大きな演奏。ロジェヴェンとソビ文のコンビに「感動的」という言葉はあまり似合わないと思っていたが、それは間違いだと気付かされた一枚。素晴らしい。1楽章は堅実なテンポでじっくりと聴かせる。やはり金管と打楽器が突出していて、多少軽い感じを与えはするが、引き締まった演奏で、実に丁寧な構築。ロジェヴェンならもっと駆け込むような大暴走の「戦争の主題」を期待してしまうが、それは良い意味で裏切られる。特筆すべきは3楽章以降である。当時を知るロシア人としてのロジェヴェンの血がこういう演奏にさせたのか、不必要なわざとらしいまでの叙情性に流されることなく、表面的な大音量、大爆発でごまかされもしない。いわゆる「爆演」には非ず。だからこそ、ここまで感動的なのか。真剣さがひしひしと伝わってくる。

バルシャイ指揮 ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

1991.06.22/Live BIS

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ソ連崩壊直前にして、ナチのソ連侵攻50周年に行われた反戦演奏会のライヴ録音。指揮はショスタコーヴィチと親交深く、いくつかの編曲も手掛けているバルシャイ。演奏はユンゲ・ドイチェ・フィルとモスクワ・フィルの合同オケ。このライヴは極めて複雑な心境のもとに行われたのではないか。7番が望まずとも国威高揚に用いられたという運命を考えても。しかし、会場までもが一体となった、とてつもなく切なく悲しい、痛々しいまでの感動がある。オケにパワー不足が見られなくもないが、演奏活動の真髄も見え隠れしている。この空気を丸ごと録音で聴くことができるという点でも、歴史的な一枚と言える。

バーンスタイン指揮 シカゴ交響楽団

1988.06/Live Deutsche Grammophon

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伝説ライヴのメイン・プログラム。バーンスタインによる7番。超感動的な圧倒的音圧と流れ。そしてとても綺麗。バーンスタインはこの曲の中に何を見たのか。80年代後半に政治的プロパガンダなどあろうはずもないが、ショスタコーヴィチ自身の愛国心の表現などとも無縁であろう。まるでマーラーの巨大な交響曲を、半ば自己陶酔的に曲の中に没入していくような、あの独特のアプローチをもってバーンスタインは極めて深く、感動的に歌い込んでいく。そのためか、同曲の録音の中でもかなり遅い。80分を超え、CD2枚組になってしまう長さだ。特に3楽章から4楽章に至る音の洪水は、アンプを大音量にして酔いしれたい。今後も、決して越えられることのない7番の決定的名演であり、この曲の一つの完成された姿と思える。

スヴェトラーノフ指揮 スウェーデン放送交響楽団

1993.09.10-11/Live Daphne

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半ば伝説となったスヴェトラーノフとスウェーデン放送響の7番。まず驚くのは、その音圧。スピーカーからこんな音が出てくるのは初めて。「うおっ」と思わず仰け反ってしまった。ソビエト国立響の二つの盤と比較した上での魅力は、まず第一にズシリと響く低音の効いたオーケストラ。しかもこれがまた非常に上手い。スウェーデン放送響はとんでもないオケだ。こうした低音の響きを拾う録音も大変素晴らしい。それが圧倒的な超高密度の音圧となってスピーカーからモコッと出てくるのである。第二には4楽章ラスト大団円の巨大さに感激する。低音が効いたオケを背景に、「ズゴーンッ!」と打ち鳴らされる大太鼓に卒倒。巨匠としての風格が増したスヴェトラーノフの深い味わいもあり、大変素晴らしい。突き進むような攻撃性や冷気は影を潜め、そこにあるのは深く温かい音楽。ここで一つの疑念が生まれる。これは果たしてショスタコーヴィチなのか?という疑念である。この演奏を聴きながらイメージするのは、ショスタコーヴィチが描いたレニングラードという都市ではなく、スヴェトラーノフそのものなのだ。

コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

1975 BMG

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コンドラシン盤は、大げさな歌いまわしやドラマティックな展開があまりないので、物足りなく聴こえる部分もあるかもしれないが、シャープで切れ味ある演奏。鋭く切り込んでくる金管や高弦の音色は、このコンビならではの魅力に満ちている。スヴェトラーノフやバーンスタインのような感情移入型のぶ厚い熱演が望まれる一方で、いかにもショスタコーヴィチらしい冷たい響きを表現した演奏であり、ムラヴィンスキー盤の音質を考えると、ソビエト同時代系の演奏として、コンドラシン盤はかなり貴重。

ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

1953.02.26 Victor

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ムラヴィンスキーによる7番は、今のところこのスタジオ録音のみ。録音が古く、強奏部はほとんど拾いきれていないが、真に感動的な3楽章はムラヴィンスキーにしか到達できない何か氷の壁のようなものを感じる。決して熱くなりすぎず、例えばスヴェトラーノフと比較するとその燃焼度の差は歴然としているのだが、ムラヴィンスキーのある種冷めた視点は非常に興味深い。5番や8番に接するような態度は変わらない。激情に任せて燃え上がる演奏とはまるで方向性の違う、ムラヴィンスキーのショスタコーヴィチがここにある。録音さえもう少し何とかなっていれば…、と願わずにはいられない。

ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ放送交響楽団

1968.01.08/Live YEDANG

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相変わらず録音が悪いのが難点だが、その演奏内容は素晴らしい。豪快なサウンドはロジェヴェンならではだが、3楽章から4楽章にかけての高揚感はライヴということもあってか、もの凄い盛り上がりを見せる。スヴェトラーノフ盤に通ずる限界炸裂の金管が魅力的。60年代後半のロジェヴェンとモスクワ放送響のコンビは、数々の名ライヴを残しているが、当盤もそうした名演の一つに数えられる。それにしてもこの恥ずかしいまでの「ぶりぶり感」、さすがロジェヴェン先生。

ケーゲル指揮 ライプツィヒ放送交響楽団

1972.05.16 WEITBLICK

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その独特のシビアな響きは魅力的で、テンポはかなり速めだが時にぐっと落として重々しく歌ってみせたりするドラマツルギーが、単に厳格なだけには陥らない感動的な演奏にしている。だが、一点どうしても納得いかない部分があるのはスネアで、主体性のない優柔不断なテンポ感は残念。特に1楽章は致命的で、オケを支えるリズムになるどころか、すっかりオケに合わせているだけの内容。

N.ヤルヴィ指揮 スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

1988.02 CHANDOS

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意外すぎる超爆演。比較的、どんな曲でもそつなくこなす(ただしいずれもとにかく速い)ヤルヴィは、実に職人的な手堅い演奏をするという思い込みは、このディスクで一気に崩れ去る。全曲を69分で駆け抜ける、いや、駆け抜けてなどいない。あちこちで事故を起こしながら、爆走し、強引に突き進む。まるでカーチェイス。タテ線ズレまくり、アンサンブル崩壊、まるでスヴェトラーノフの危険なライヴのよう。しかしこれはスタジオ録音。ヤルヴィは何を考えているのか…。スケジュールやその他の都合でこうとしかできなかったのか。あるいは、これで良しとしたのか。とにかくその荒れっぷりは凄まじい。スネアのリズムは終始落ち着かず乱れまくっている。スネア奏者は二度とこの録音を聴きたくないと思っているのではないか…。かの名門スコティッシュのスネア奏者といえば世界一ィのはずなのだが…。さて、この録音には献辞が付記されている。「ロシアの偉大なる指揮者エフゲニー・アレクサンドロヴィチ・ムラヴィンスキーの思い出に」。ムラヴィンスキーが亡くなったのは88年1月。この録音の前月である。ヤルヴィの感情の迸りは、そのためか…。

バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

1962.10.22-23 SONY

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シカゴとの新録音に比べると、だいぶ速いテンポを取っていて情熱的。各楽器間のバランスも良い。じっくり歌い上げるところもあり、まだ若くはあるがバーンスタインの高い芸術性、そしてテクニックを感じさせる。個人的なことを言えば、私が初めて買ったショスタコーヴィチのCDであり思い出深い一枚。高校生だった。レコード屋は町田のTAHARA。木目の壁で仕切られたクラシックコーナーの光景は今でも忘れないし、僕にとってレコード屋といえば町田TAHARA。相模大野・本厚木・新百合ヶ丘と、自分の生活圏でお世話になったレコード屋であり、TAHARAの存在あってこそCDリスナーとして育てられたと自覚している。

ハイティンク指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

1979 LONDON

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ハイティンクは実に堅実な演奏を聴かせる。この人にこそ政治的イデオロギーや作曲背景は無縁であろう。さすがハイティンクと言わざるを得ない。バルシャイとユンゲ・ドイチェに代表されるようなイデオロギー性は、皆無と言っていい。ここにあるのは、純粋な器楽交響曲としての「レニングラード」だ。正確にスコアを再現し、音を構築していく。この曲が国威、士気高揚のプロパガンダであろうとそうでなかろうと、ハイティンクに見えるのは作曲家ショスタコーヴィチが五線譜上に書いた音符だけだ。シンフォニストとしてのショスタコーヴィチに真正面から取り組んだ演奏。この7番がやはり偉大な交響曲であることを再認識させられる演奏である。

バルシャイ指揮 ケルンWDR交響楽団

1992.09 Brilliant

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ライヴ盤と比べてじっくりと腰を据えて取り組んだ丁寧さが感じられるが、オケへの技術的な不満が残る。また、ユンゲ・ドイチェが技術的なパワー不足を情熱で補えていたことを考えれば、WDRにはもう少し頑張ってもらいたいところだ。ただ、曲の方向性はライヴ盤とそう違っておらず、3楽章の盛り上がりなどは感動的。

キタエンコ指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

2003.09/Live CAPRICCIO

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キタエンコ全集の中ではいま一つぱっとしない中期交響曲録音の中にあって、ひときわ輝くのがこの7番。1楽章の燃焼度はいまいちなのだが、3楽章の温かい響きは大変美しい。この楽章だけを単体で取り出すならば、これだけ美しい演奏はそうはない。歌い込みも共感できるものだし、練習番号130の辺りの盛り上がりは感動的で目頭が熱くなる。続く4楽章も完成度が高い。スヴェトラーノフのような激しさとは違うが、時折強烈な響きを伴いながらラストまで感情を込めて歌い抜く。

M.ショスタコーヴィチ指揮 ロンドン交響楽団

1990.11 Collins

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なかなか良い!特に1楽章。マクシムの覇気を感じる。全体的に雑な感がないでもないが、そのエネルギーは素晴らしい。崩壊するか、と思いきや何とか切り抜けていくサバイバル的演奏である。

大植英次指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団

2004.02.12-13/Live fontec

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今後の活躍への期待が高まる大植+大フィル。ショス7、マラ6、ブル8という大曲CDが一気にリリースされたが、当ショスタコ演奏は素晴らしい。SACDなので録音も優秀。決して無理はしていないけれど、どんどん肥大していく1楽章は聞きもの。7番の名演を思い出すと、こうした大進撃の背景に凍て付くような寒さが感じられるのだが、大植の演奏には残念ながらそれがない。大阪だからといって決してナニワ節ではないが、温かみのある演奏だ。3楽章ではそれが顕著。ゆったりと構えたスケール感のある演奏に仕上がっている。4楽章も激昂するようなことはないが、十分な音響が綺麗に録られていて申し分ない。

ナヌート指揮 リュブリャーナ交響楽団

1990.11 Michele Audio

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「クラシック・ジャーナル」誌によるショスタコーヴィチのディスク聴き比べで、7番のベスト1に輝いたのが当盤。まさかナヌートが1位とは夢にも思わなかったが、実に手堅い演奏なのである。ついでに2位はロジェヴェンのソビ文盤、3位はバーンスタインのライヴ盤、4位にベルグルンド、5位がスヴェトラの68年盤であった。ナヌートもリュブリャーナ響もマイナーだが、このコンビの名はしばしば駅前の安売りワゴンなどで見ることができる。廉価に似合わぬ猛烈演奏で、私はもっと評価されていいと思うが、闇の巨匠として君臨するのを見守りたい。ロシア国立響だのソビ文だのシカゴ響だのと、名盤を残しているオケはいずれも超重量級で、それらの演奏と比べると確かに迫力には欠けるし、オケの技量は決して高いわけでもなくアンサンブルも怪しい。シンバルなどの改変も理解できないが、丁寧に心のこもった演奏をしているのが本盤の何よりの魅力。この曲から変な力みを取り除いて素直に演奏するとこうなるのではなかろうか。ちなみに、同放送交響楽団と同じオケだが、オケ表記はジャケットに従った。どっちが正しいのだろう?

ウィグレスワース指揮 BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団

1996.12.02-04 BIS

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なかなかに熱い演奏である。オケが力不足の部分もあるが、その熱意は評価すべき。3楽章、気合の入りまくったシンバルに敬意を表してベストCD入り。ところで、CDにはわざわざスネア奏者が指揮者の下に記されている。マーク・ウォーカーという奏者である。しかし、スネア奏者をソリスト扱いして名前出すのもどうかと思う(そもそもショスタコの打楽器の扱いは異常とも言えるこだわりようで、全てがソロ楽器として通用するようなもの)。