交響曲第4番 ハ短調 作品43

スラットキン指揮 セントルイス交響楽団

1989.10.03 RCA

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その華麗で煌びやかな響きが、「ショスタコじゃない!」と思われる向きもあるかもしれない。しかしこうした華やかなショスタコーヴィチも心地良い。オケも素晴らしく、この難曲に対しほとんど不満がない。デジタル録音時代のCDとして、最もトータルバランスに優れていると思える。このスラットキン盤を4番のベストCDとしたい。演奏、録音ともに良質。スラットキンがショスタコーヴィチに何を見ているかはまるでわからないが、実に真摯な演奏。4番は、その初演の遅れからかいかにも謎に満ちた曲とされているが、いやしかしそんなことはないだろう。10番以降の後期交響曲に比べれば。ショスタコーヴィチはロストロポーヴィチに「全集を録音するなら4番以降にしてほしい」と言ったそうだ。言ってみればこの曲は交響曲第1番なのである。1〜3番までのある種の実験作、あるいは習作を経て作り出された純粋な器楽交響曲だ。解釈はそれぞれだろうが、4番に不必要なまでの暗号を読み取ろうとするのは野暮なことではないか。オタク的な深読みをするよりは、スラットキン盤のようにドパ〜ッと華麗に響かせ、そのオーケストレーションの面白さを堪能させてくれるような演奏が好きだ。演奏内容では、とりあえず打楽器について触れておかねばならない。シンバルはサスペンドとの組み合わせを若干変更している箇所もあるが、どちらも明るい響きでよく鳴っている。1楽章プレストのスネアも、これだけ鳴っていれば申し分ない。ウッドブロックよりもスネアが一歩出ている方がスコアの印象に近い(どうしても楽器の特性上、ウッドブロックが前面に出てしまうのだが…)。ティンパニも音を割ることはなく、豊かな音色で叩いている。クリアーに届いてくるところがさすが。大太鼓も鍵盤も安定した演奏。トライアングルやグロッケン、サスペンデッド・シンバルなどのキラキラ系の金属打楽器が美しいのは、スラットキンの他の録音でもそう。唯一不満が残るのは、銅鑼の音程と音色か。それにしても、スラットキンという指揮者は結構打楽器びいきのところがあるのではないか。スラットキン編曲の『展覧会の絵』なんて打楽器の活躍が楽しい。現代音楽の演奏にも力を入れているようだし、打楽器の運用についてこだわりがあるのかもしれない。このディスクで特筆すべきことがもう一つ。例によってトラックの切り方だが、なんとスゴイことに全11トラックに分かれている。すなわち、1楽章で6トラック、2楽章1トラック、3楽章で4トラックである。何と親切なのだろう。やはり、CDは「好きなときに好きな部分を何度でも聴ける」という特性がある以上、こうしたトラック分けこそなされるべきだ。

【国内盤の解説(2011年)について】

2011年に当盤の日本国内盤が初発売された。そのライナー(藤井宏氏)が私の評価と非常に近かった。特に「華麗というかきらびやかというか、オーケストラの高度な技術と相まった流麗な響きが特色である」、「『これはショスタコーヴィチではない』という向きもいるかもしれないが、この作品の複雑な内容を整理し、堅実な解釈を施した演奏は、オーケストレーションというものの魅力を余すところなく堪能させてくれるだろう」という部分は、当サイトの評(2003年)と一致している。嬉しいものだ。

コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

1962 BMG

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これを聴かずしてショスタコは語れまい。史上最強の4番。演奏に関しては、格が違うとしか言えない。「別格」という言葉こそ相応しい。他の録音とは本来比べるべきではない別格の感動的な演奏。録音が古く、音も不鮮明で濁っているのだが、それでもこの「凄み」。異様なパワーは何だ!?「狂気」とかいうものではない。もっと知的なものだ。この録音をしているときに、ショスタコの生霊(まだ生きている)がホール内を漂い、次々と団員に取り憑いていったのではないか。いずれにせよ、この録音が持つ尋常でない雰囲気は他の誰にも真似できないだろう。終楽章の消え入るようなラストは、鳥肌が立つほど瞑想的で美しい。演奏そのものに関しては、コンドラシンとモスクワ・フィルの組み合わせの良い部分が見事に表れている。テンポは速め。ロシアン・ブラスが鋭い音を鳴らし、打楽器は響きの抑えられた強烈な打撃音を聞かせる。特に金属系打楽器の鳴りが凄まじく、1楽章プレストのシンバルの衝撃には驚かされる。録音の良し悪しはシンバルなどの金属系打楽器に顕著に表れるが、これは録音の悪さがあってもなお素晴らしい音色。BMG国内盤も当時は話題になるほど音質が良かったようだが、更に超リマスタ技術が開発されるのを待ちたい。頼む、スクリベンダム!…と思っていたらアウロスがリマスタしてくれました。確かに音質は良いですが、録音に対する不満を解消してくれるほどではなく、更なる技術力の向上を願うばかり。

ビシュコフ指揮 ケルンWDR交響楽団

2005.09.19-23 WDR

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数々の名演、名盤を差し置いてこの位置に。う〜ん、ジャケットすこぶるダサいし、SACDなのにプラケースが普通のCDと同じだし、ビシュコフって、なんかいかにもビシュコフって顔してるよな〜、とか。WDR自主制作の一連のショスタコ聴いてもパッとしなかったんだがのう。いや、しかし4番がこうなるという兆しはあったのだ。当ディスクの録音に先駆けてこのコンビは9月16日にライブをしている。それが素晴らしかった。で、いよいよセッション録音盤が登場。参りました。CDを聴きながらぽかーんとしてしまった。「こりゃスゴイ…」と。まず、SACDだからというのはあるが細部まで音像がしっかりしている。ティンパニのこのクリアさは奇跡的だ。隣で聴いているみたい。ロジェヴェンみたいに硬質な音ってわけでもないのに、ツブ立ちがしっかりしてる。テンポが遅いところでちゃんと叩き分けているから、というのもあるかもしれない。それにしてもこの圧倒的な音響の中に埋没しないというのは特筆すべきだろう。ライブ後にクールダウンしてから録り直したというのも、この演奏に大きな効果を上げている。ライブでは散漫になっていたり雑になっていたところも、冷静に丹念にプレイしている。これって実はすごい理想的な状態なんじゃなかろうか。ライブの爆発的なパワーを内包したセッション録音。ライブだっていきなり演奏したわけじゃなかろうし、ショスタコの他の曲も録音した上で4番のライブに臨み、しかもその後すぐに4日間かけてセッション録音って…。うむむ。これはボリュームを下げていても聴けるし、上げればさらに充実するし、何ともまあ優秀な(という言葉は相応しいと思う)、そして音楽に携わる者としてうらやましい限りの演奏だ。

ハイティンク指揮 シカゴ交響楽団

2008.05.08-11,13/Live CSO RESOUND

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待ちに待ったハイティンクの4番であったが、期待通りの名盤であった!御年80歳を目前にして、この凄み!年を取って「丸くなったね」と言われるような人物に興味はない。若い頃にさんざんとんがってた男が、だんだんと激しい部分が影を潜め「円熟」とも言える深みを増していくというような構図は、決して好きではない。ハイティンクは全集の名演から30年、さらにパワーアップしてショス4のディスクを残してくれたぞ!シカゴ交響楽団という最高のパートナーと共に。だいたい、シカゴ響の4番ってだけでもすごいのに(プレなんとかって人が確か録音してたような…、いや、気のせいか)、それにレベルアップしたハイティンクだからな…!これはもう感涙のディスクだ。10年ぶりに同窓会で再会した中学生のときの恋人がものすごい美人になってたときの感動みたいな(そんな経験はないが)。いや、X JAPANの10年ぶりに帰ってきたベーシストHEATHが、40歳になったはずなのに昔より遥かにカッコ良くなっていたときの感動というか…。このダイナミックな演奏!ムラヴィンスキーとはまた違った生真面目な「完璧」主義的演奏は、清々しくもある。ライヴ音源と言いながら5日分のテイクをまとめた、実質セッション録音のような精度で、細かな部分までこだわりが見える。音はタイトで引き締まっており、ストイック。全集盤のような冴えた冷たい響きは薄くなっているものの、普遍的とも言える交響曲的な(というのもおかしな表現だが)音の混ざり合い、世界観が好き。ほんとに…。素晴らしい、ハイティンク。

ハイティンク指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

1979 DECCA

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私がハイティンク盤を好むのは、それが最も高度に洗練された演奏だからである。ショスタコ演奏を東西に分けるならば、どうしても東側の録音に興味を惹かれるものが多くなるが。しかし4番は最もマーラー的と言われるからこそ、こうした西側の演奏が意味を成す。そつのない手堅い演奏、とか、ロシアン・ブラスが苦手な向きに、とかいうのではない。ハイティンクのそれは、極めてレベルの高い部分での洗練である。決して金管や打楽器をがなり立てて演奏効果を狙うわけでもなく、細部まで徹底的に研究し構成された見事な演奏だ。スタンダードでの完成度を要求される曲なのだ。とてつもなくスケールの大きい底の厚い演奏で、交響曲作曲家としてのショスタコーヴィチを感じさせる。コンドラシン盤にないものを多くハイティンク盤は持ち合わせているのだ。ちなみにこのディスクのそれ以外での大きな魅力が一つ。一つめは、トラックが五つに分かれていること!これはこの曲において重要だ。1楽章と3楽章が長すぎるのだ。1楽章はプレストで区切られていて、いつでもすぐに燃えるところから聴ける。素晴らしい。

井上道義指揮 大阪フィルハーモニー管弦楽団

2014.04.04,05/Live

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圧倒的な演奏に打ちのめされる。井上道義の大阪フィル主席指揮者就任ライヴにおける2日間の演奏。スゴイ…!!一言で言うならば「刺激的」…!!ものすごく刺激的なサウンドがほとばしる一枚。EXTONの録音も素晴らしく、臨場感ある音色が我が家のステレオからもしっかりと届く。最初の一音から、空気を切り裂くような攻撃的な冷たい音色がグサグサと刺さってくる。これは尋常じゃあない、と思って聴き進めていけば、荒れ狂うスピード感と飽和しきった洪水のような音の渦。プレストに雪崩れ込んだときの勢いと、狂気的なテンポは、おそらくこの井上盤を越えるものはないだろう。驚くほどの無鉄砲な、そして無防備なテンポで突っ込んだプレスト!どうなるのよ!と、思ったらこの荒れ狂う音響の濁流を制御するクールな視点がわずかに感じられるギリギリのドライヴ!こういう演奏を聴きたかったんだ、と思わされる一枚にして素晴らしいショスタコーヴィチ像を提示したディスク。しかし、井上道義といえば『ショスタコーヴィチ大研究』(春秋社)で「ショスタコーヴィチを解毒する」というタイトルの序文の中で、次のような言葉を寄せた男である。「四番はそのあまりにエゴイスティックな音楽の服装がいくらタコ好きな私もくさくて近づきたくない。いくら才能が大きくても、もろにみせつけ、ひけらかされれば僭越ながら私、降ります」と。その後、井上道義にどんな変化があったのか知る由もないが、その音楽的な才能を全開に輝かせてエゴイスティックな服装をまとったショス4に挑んだわけだ。ところで、日比谷公会堂で行われた一連のプロジェクトには私も妻と足を運んだ。旧友に会ったり、この分野の識者に会ったりして、実に有意義なプロヘクトを経験をさせてもらったが、そこで演奏された井上道義の4番は、正直なところ、実は、あまり興奮するものではなかった。オケの技量なのかリハの少なさなのかわからないが、ちょっと雑に感じたものだ。ミスが多すぎたし、やりたいことはわかるがちょっとついていけない感じがした。しかし、このディスク。細部では言いたいことだってあるが、もしこんな演奏を生で聴くことができたなら、きっと、僕はすごく満足だ。一人の、ただサラリーマンのショスタコ・ファンとして、きっとこんな演奏と時間と場所を共有できたなら、僕は満足だと思う。EXTONという世界屈指のレーベルの力を信じて、このディスクは必携であると伝えたい。この切り込み具合、他にはないですよ。

ロストロポーヴィチ指揮 ロンドン交響楽団

1998.02.26/Live ANDANTE

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これはヤバイ!と思った。自分の耳を疑う。特筆すべきは、打楽器の音響的快感の凄まじいこと。プレストの大音響は、そのまま音の洪水に飲まれたい。しかし公平に聴いて、物足りないところもある。ミスもある。そうしたものがいくつも見つかってきて、コンドラシン、スラットキンと聴き比べると、やはり彼らの演奏は偉大であった。そういうわけで、ちょっと安心したのだった(不思議な心理だが、自分のお気に入りの盤を超えるものを望みつつ、やはりこれまでのお気に入りを大事にしたい)。ところで、当ディスクには4番の初稿バージョンも収められている。「断章、アダージョ」となっているが、完成版の断片があるもののほとんどは別の曲。とても興味深い。貴重な録音である。4番は完成から初演までに26年の空白があるが、この間にショスタコーヴィチが全く手を付けずそのままにしておいたとは考えにくい。やはり初演前には相当に手直しをしたのではないか…。その過程で抜け落ちた部分、失われた部分がこのいわゆる「初稿版」と呼ばれるものかもしれないが…。これから専門家の間で研究が進んでいくことと思う。

ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団

1985 BMG

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4番にはコンドラシンの強烈な録音があり、それを超えるのはなかなか難しい。ソビエト勢の演奏がデジタル録音で聴けるのはそれだけでも価値があるが、しかしそれ以上にロジェヴェンはこの曲の凶暴性や交響的な部分を理解し、それを見事に音に表している。コンドラシン盤に引けを取らぬ圧倒的な名演と言えよう。どこを取っても高水準で、ロジェヴェンの全集中でもトップクラスだ。金管の強烈な音、切り裂くような木管、ガシガシ直音で聴かせる弦、明らかに叩きすぎの打楽器、ロジェヴェンのショスタコに望むほとんど多くのものがこの録音で聴ける。中でもプレストの弦楽器のフーガは最高の出来。かなり速めのテンポだが崩壊することなく、凶暴に残酷にそしてクリアに聴かせる。このフーガを越える録音はそうそう現れないだろう。2、3楽章も素晴らしい。ラスト、豪快に不協和音を絶叫。その後に訪れる静寂は感涙である。この録音を聴くと、作曲当時初演を取り止めたのは正解だったと心から思う。

コンドラシン指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団

1971.01.10/Live RCO

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コンセルトヘボウのアンソロジーから。14枚組みで約1万4000円だから、まあ安いといえば安いのだが、なかなか手が出せんでいた。しかし、あのコンドラシンの4番が入っていて、しかも71年コンセルトヘボウ…。同オケとの68年の6番ライヴが超カッコ良かったし、「ええい、ままよ!」とレジに持っていった。で、聴いてみて結論を一言。1万4000円の価値あり。最初の一音でもうやられる。我々がコンドラシンとコンセルトヘボウのライヴに期待する通りの、キレ味の良い音が鳴る。さすがコンドラシン。これだからこそ、我々はコンドラシンが好きなのだ。相変わらずすごいテンポで駆け込んでいく、この疾走感は比類ない。録音はあまり良いとは言えない。ときどきよたっているし、ノイズもある。演奏も金管がへたるところやアンサンブルが大幅に乱れるところもある。しかしそれらを含めてライヴ録音としての魅力に満ちている。

ロジェストヴェンスキー指揮 フィルハーモニア管弦楽団

1962.09.07/Live BBC

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ロジェヴェン様の4番はこの時点で完成しているのです。基本的なアプローチは変わらない。最初から最後まで「ロジェヴェンのショスタコ」。既出ディスクの中では最も古い録音で、唯一ショスタコーヴィチ氏存命中の演奏。「西側初演」との表記があり、しかも氏は客席で聴いていた。西の一般人はこの演奏を聴いて、「ソ連にはショスタコっちゅう、すごい奴がおるんだべえ」となったのか…。興奮のるつぼ。4番は大規模なオーケストレーションによる凄まじい音響が魅力ではあるが、その合間にときどき顔を出す可愛らしさも見逃せない。ロジェヴェンはそういうところを聴かせるのが抜群に上手い。深刻になりすぎず、ユーモアはユーモアとして表現できる(当然、インタビューなどを聞けばロジェヴェン氏のソビエト観が恐怖に裏打ちされたものであることは理解できるのだが)。当ディスクはライヴ録音なので(しかも西側初演)、演奏の精度という点からは後年の演奏の方が優れている部分が多々ある。録音も古くて、瑞々しさは感じられない。しかし乾いたこの音色は、まさに直球。ズシンと胸のど真ん中に投げられた感じ。血、吐きそう。これだよ、ショスタコ。…いや、なんかね、「鼻」のリハーサルを客席で聴いているあのショスタコさんの姿を思い出したら、この4番もきっとリハーサルのときにそわそわしながら客席をうろうろして、ときどきロジェヴェンに注文出していたんだろうな、と。そうして作り上げられた演奏なのかと思うと、なんだか感動しちゃうんです…。

ロジェストヴェンスキー指揮 ボリショイ劇場管弦楽団

1981.03.28/Live Russian Disc

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ロジェヴェンの4番は四つの録音を聴くことができるが、いずれも素晴らしい出来。このボリショイ盤はライヴの事故が多々起こっているものの、ソビ文よりもシャープでスマート、知的な印象。そしてライヴならではの熱意や勢いが伝わってくる。耳に痛い強烈な金管は相変わらずだが、少し軽めで硬質、直線的な音色がボリショイ響らしい。打楽器に関しては、スネアが非常にクリアで良い。ティンパニはダイナミックスの幅が極端で面白い。例の1楽章プレストの箇所は、スネアが一人で頑張っているという感じ。ティンパニはディミヌエンドしてすぐ消えてしまうし、ウッドブロックはほとんど聴こえない。それから、このライヴ最大の事故と思われるが、シンバルが間違える(笑)。…いや、笑いごとではない!さて、ロジェヴェンの4番の録音はそれぞれに長所と短所があり、甲乙付け付け難い。全体を見るとやはりソビ文盤が上か…。ウィーン盤は録音の悪さが何とも足を引っ張る。ボリショイ盤はときどき不安定になりやや危うさを感じさせる。しかし、いずれも爆裂系指揮者の真髄を見るような素晴らしい演奏であることには変わりはない。

アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

1989.01 DECCA

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アシュケナージの交響曲録音の中では最高の部類に入る。スマートな曲解釈で、スッキリと聞かせる。テンポも速め。オケのパワー不足によってかよらずか、やや薄い印象もある。が、打楽器はいずれも好演。スネアもティンパニも十分に鳴らしているし、音色も良い。1楽章プレストは、弦がやや不安定なものの、金管や打楽器のフォルテシモはなかなか聴かせる。ウッドブロックとスネアのバランスはかなり良い。それから、ハイティンク盤同様、このCDもトラックが五つに分かれている!さすがデッカ!4番はこうあってほしいですな。なお、アシュケナージは2006年にNHK交響楽団と同曲を録り直し、全集には後者をラインナップしている。しかしながら、ロイヤル・フィル盤以上にN響盤を取る理由が見つからない。N響盤は、老人の演奏だと感じた。

ボレイコ指揮 シュトゥットガルト放送交響楽団

2006.04.27-28 haenssler

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ショスタコばかり聴いてるとドイツの放送オケに疎くなる(ような気がする)んだが、SWRっていうのはなかなか良い音色ですなー。決して濁っているわけではないのに、こう、ボスッと沈むような音色はたまらん。重量感というか。あ、これが「深い音」ってやつか!というわけで、深い音のするショスタコの4番である。何だか、この曲に関しては特にそう思うのだが、ソビエトのある種の暗さ、残酷な背景などを全て取っ払って、普通にサラッと演奏してみると実はすごく名曲なんじゃないか、と。そろそろスターリンがどうとか、うん十年封印されていたとか、危険な曲だとかそういうのを抜きにしていいんじゃないかと思うわけだ。で、このボレイコ盤は、そういう演奏。こざっぱりとしてて、何とも清々しいのである。3楽章の最後なんて、これまでとは別の感動を味わえる。オケは上手くて細部まできっちり演奏してるし、暴走しないし。「よいしょ」という感じでテンポを合わせているのが緊張感を殺ぐのは惜しいが、打楽器に関しては、スネアの装飾音なんて全然サッパリしたもの。「ペガサス流星拳〜!」という感じの演奏ではなくて、アイオリアが目を閉じたままふわりとライトニングボルトを放ったような、力は抜けているけれど強烈な音がバシバシと鳴る。ところで、このボレイコという指揮者は初めて聴いたが併録のマクベス夫人も良かったし、今後も期待したい。しかも、ちょっとイケメンさんですな。

キタエンコ指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

2003.02 CAPRICCIO

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全集を1番から聴き進め、その迫真の演奏に魅了されるが、問題作の4番も期待に違わぬ立派な演奏。若干散漫な印象も受けるが、アンサンブル能力と燃焼度が高いのが魅力的。テンポも崩れることなく安心して聴ける。この安定したテンポ、リズムはキタエンコ全集の特徴であろう。1楽章プレストも決して遅いテンポではないが、しっかりと噛み合っている。スネアが炸裂する打楽器ソロも素晴らしく、ころころと色を変えるこの曲に相応しく、場面ごとにちゃんとチャンネルを切り替えるコントロールはさすが。2楽章の例のリズムは低弦もかなり効かせていてカッコイイ。もっとも充実しているのは3楽章で、深い弦の音色と煌びやかな管楽器が美しい。ピアニシモの情緒がもう少し欲しいところではあるが、このオケ、やはり只者ではない。

シモノフ指揮 ベルギー・ナショナル管弦楽団

1996.02.16-18/Live Cypres

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ミンミン唸る響きの細い金管群が強烈。ライヴ録音だが、編集されている為か緻密な演奏となっている。1楽章フーガのテンポは遅めだが、ハラハラドキドキ感は抜群。それは全体的にも言えることで、どこか落ち着かないテンポ感と強烈なドライヴに、グイグイと引き込まれる。しかし、混沌としているのかというとそうではない。実に明瞭、分かりやすい音楽となっているのだ。

コンドラシン指揮 シュターツカペレ・ドレスデン

1963.02.23/Live Profil

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もっさりしている。これが最大の違和感だと思う。この演奏を高く評価する人がたくさんいるのも知っているし、話を聞いてみれば「なるほど」と思うのだが、「コンドラシンのショスタコーヴィチ」というある種の究極の期待感が既に一人歩きし増大しきっているのだろうか。テンポ的にはコンドラシンらしくて、全曲を59分で演奏している。もたつくような感じはない。しかし、このもっさり感は何だろう…。録音ももっさりしているが、もっと根源的な。やっぱり音色なのだろう。また、ミスや乱れも多く、ライヴとしての完成度もいまいち。なお、同レーベルから同じ組み合わせの15番も出ているが、やはりもっさりしている。

ラトル指揮 バーミンガム市交響楽団

1994.07 EMI

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西側のスタジオ録音で、このような演奏が聴けるとは。隅々まで丁寧にスコアを再現している。録音状態が大変素晴らしく、ここまで鮮明に音が鳴っている4番は他にない。バランス感覚もほとんど非の打ちどころがない。各楽器、いずれも突出することなく、全体の響きとして美しく仕上げている。また、とても勢いがある。特に3楽章の強奏部は速めのテンポでぐいぐいと引っ張っていく。金管の鋭い鳴りと流れるような弦の響きに圧倒され、その快速ドライヴに聴き入ってしまう。

M.ショスタコーヴィチ指揮 プラハ交響楽団

1998.02.03-04/Live SUPRAPHON

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丹念に仕上げた秀演。よくコントロールさている。マクシムの全集の中では2、3番のような爆発的な迫力には欠けるものの、マクシムにはあまり見られない丁寧さが感じられる。もちろんマクシムというのは無難な演奏をするタイプの指揮者ではないので、強奏部はガツッと鳴らしてくれる。それに、通しで聴けばやっぱり3楽章のラストは感動してしまう。惜しいのは、やっぱりオケの技量の部分か。打楽器はいずれも好演。録音のせいなのか楽器のせいなのか、響きは安っぽいのだが。

バルシャイ指揮 ケルンWDR交響楽団

1996.04.16,24&10.24 Brilliant

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丁寧すぎるぐらいの精緻性を感じる秀演。バルシャイのショスタコ作品への取り組みの姿勢を伺える。確実に着実に必要な音を鳴らしている。ロジェストヴェンスキーのような爆裂系の匂いがまったくしない。そういったわけで、この曲に爆裂系の響きを求める向きには薦められないが、バルシャイの全集を1番から15番まで通して聴いたときにその存在感が改めて心に沁みる一枚。

ケーゲル指揮 ライプツィヒ放送交響楽団

1969.05.20/Live WEITBLICK

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ケーゲルは、実は重要なショスタコ指揮者の一人であった。その録音がこうして聴けるようになったのは最近のことだが、これからもどんどん世に出ることを願いたい。ケーゲルのショスタコは、ドイツオケの響きでありながらそれでいて実にショスタコらしい。乾いた硬質な響きは録音年の問題かも知れないが、時折レニングラード・フィルを彷彿とさせる冷酷な音を出す。ただし、金管や打楽器が大爆裂するタイプの演奏とは異なる。弦楽器の激しい弾き込みが魅力だ。低弦から高弦までガシガシと地を揺るがすような激しい轟音を響かせる。この4番の録音にそれは顕著で、アンサンブルが多少乱れはするものの、圧倒的な存在感を示す。「ショスタコは金管と打楽器」という間違った先入観を払拭させるに違いない。しかし、管楽器も打楽器も負けてはいない。やや細い響きではあるが、ラッパを中心によく鳴っている。打楽器はティンパニが健闘。ケーゲルの選集全体に言えることでもあるが、金属系打楽器はあまり綺麗に鳴らない。鍵盤も薄い。それでも何というか、風格はある。ピリッと張り詰めた堅い空気と緊張感は、ケーゲルならではであろう。ところで、69年の録音ということは、初演からそう離れてはいない。11番にしても初演直後の録音であるし、ケーゲルのショスタコへの関心は大きかったと伺える。

シナイスキー指揮 BBCフィルハーモニック

2000.6.20/Live BBC Music Magazine

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英「BBC MAGAZINE」の付録(というかメイン?)CD。煌びやかで爽やか、何とも清々しいショスタコらしくない演奏。しかし、それがなぜか妙に良い雰囲気を作り出している。こういう聞かせ方もあったのか、と納得してしまう。ショルティのマラ6みたいなものか。こういうタイプの演奏は初めて聴いた。

バルシャイ指揮 ブンデス・ユーゲント管弦楽団

1992.08.15/Live HARMONIA MUNDI

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妙にしゃりしゃりした鋭角的な演奏。ケルン放送響との全集盤が、どちらかというと重い雰囲気を出していたのに比べ、こちらはパリッと軽め。ライヴという特性のためかもしれないが、オケも挑戦的。その冒険度は買いだ。

オーマンディ指揮 フィルハーモニア管弦楽団

1963.02.17

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不思議な明瞭感のある演奏で、録音の古さと硬さが一層に作用して他には聴けない特殊な4番を形作っている。演奏そのものは非常に充実したもので密度が濃いが、この全体に漂う軽さというか硬さというか、ぐっと沈み込む暗さや深さとは違う別の魅力が引き立っている。

カエターニ指揮 ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団

2004.03 ARTS

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音が軽くて、重厚でドロドロした演奏を求める向きには合わないだろうが、部分的にはいくつも魅力的なものが存在している。クレッシェンドの持っていき方とか、高音の鳴らし方とか、悪くない。サスペンデッド・シンバルも素晴らしい。

ロストロポーヴィチ指揮 ワシントン・ナショナル交響楽団

1992.02 TELDEC

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全体的には大したことはないのだが、1楽章プレストのスネアがよく鳴っているのでベストCD入りした。個人的な好みからすれば、全体を聴いてそれほど惹かれない。が、全楽章通して打楽器は好演である。金管の鳴りが貧弱なのが残念。スラットキンとナショナル響の組み合わせは好きなんだが。指揮者としてのロストロポーヴィチに、どうしても心がぐっと持っていかれない理由が、この微妙なディスクからも感じてしまう。

プレヴィン指揮 シカゴ交響楽団

1977 EMI

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実に手堅い、しっかりとした演奏。平均点以上によくできている。シカゴ響の余裕のパワーが素晴らしい。難易度の高い部分でオケが悲鳴を上げるのはよく知られた曲だが、さすが地球最強のオケ、シカゴ響。難なくこなしている。これぞプロ、職人!しかし、個人的な趣味からいえば、その精緻なテクニックを駆使してさらに一歩を踏み込んでほしかったと思う。どうも「安心して聴ける4番」というのは違和感がある…。ちなみに、1楽章プレストのスネアは実に安定していて上手いが、どうも芯のないスナッピ音が気になる。やはりヘッドそのものの音を聴かせてほしいものだ。それから、銅鑼の音程が妙に高くて違和感がある。