交響曲第3番 ロ長調 作品14 「メーデー」

ロストロポーヴィチ指揮 ロンドン交響楽団

1993.02 TELDEC

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安心できる範囲でのドライヴ感、という表現が相応しいかはわからないが、心地よい緩急ある運びは爽快でもある。そしてロンドン響の豊かでありながら鋭さもあわせ持った贅沢な響きが何より魅力。大げさなクレッシェンドなど、ダイナミクスの遊びも楽しい。しかし一方で、曲想は分裂気味でもあるが、統率の取れた安定した演奏。この内容にて、決して安っぽくならず、大迫力のうちに演奏が終わる。金管もよく鳴っている。合唱も主張しすぎずにバランスが良い。政治的イデオロギーはさておき、いや、それさえも許容するかも知れない、堂々たる名演であろう。スネアのソロでは16分音符をロールで叩いているようだが、それもまた変化球的でニヤリとさせられる。

キタエンコ指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

2004.07 CAPRICCIO

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キタエンコの同全集の2番と同様に素晴らしい演奏で、優秀な録音と相俟って感嘆する。キタエンコの全集は特に初期作品に優秀なものが多い。アンプのつまみを思いきって上げて、この音質が運んでくる迫力に酔いしれたい。オケもとても良い。やる気満々の金管が魅力的で、トロンボーンなどロジェヴェンを髣髴とさせるようなぶりぶりをこれでもかと出してくれる。テンポ感覚も抜群で、非常にコントロールの効いたメリハリのある演奏を聴かせる。打楽器も好演。スネアのソロも16分音符を強調したものになっているし、力任せにならないロールの響きも素晴らしい。ティンパニは若干バランスが崩れるところもあるが、どっしりと構えた深い音色。そして合唱。まるで映画音楽のように明快に盛り上がってしまうこの感動は、他の録音では聴けまい。ドイツの名門オケは数あれど、いまいち影の薄かったギュルツェニヒ管がここまでのアンサンブルと激演を披露するとは。同じケルンのWDR(旧ケルン放送響)と聞き比べても見劣りしないばかりか、むしろこの全集では金管の底力を聴かせてくれる分、いくつかの録音はバルシャイ盤に勝る。…しかし、ケルンってすごい町だぜまったく。全集の録音が2004年7月に集中しているのだが、それにはライヴも含まれるため、この街はショスタコ濃度が極めて高かったんじゃないのか。うらやましい。

M.ショスタコーヴィチ指揮 プラハ交響楽団

2006.02.28-03.01/Live SUPRAPHON

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ショスタコーヴィチの初期交響曲に関しては、2番が良いと大抵3番も良いというのが実感するところ。抜群の2番を振ったマクシムは、やはり3番も素晴らしい。速いところで崩れるのが難点だが、それはもう言ってはならぬこと。マクシムの2、3番の魅力はその破天荒なテンションの高さにある。これまで、どちらかというと冷静に積み上げていくタイプの演奏の方がこの曲には相応しいだろうと考えていたが、マクシムの演奏を聴くとそうとも言えないことがわかる。どういう感情移入の仕方なのかはわからないが(革命とかメーデーとかはそんなに関係なく)、でも感情的。プラハ・フィルハーモニー合唱団が歌っているが、オケの音色とは違ってとても綺麗。

ヴァンスカ指揮 BBCスコティッシュ交響楽団

1998.08.19/Live BBC

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意外なところで大穴の名演。スピード感があり、ロストロ盤に近い雰囲気を持つ。クラシック然とした風格さえ感じる合唱の広がりは素晴らしく、スネアをはじめ打楽器も好演。スネアに関してはかなりの深胴を使っているようで、ツブ立ちはいまいちだが、どこどこと深い音が響くのが思わずニヤリとさせられる。

ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団

1983 BMG

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テンポは遅めだが、迫力に満ちた名演。金管のぶりぶりも素晴らしい。ショスタコーヴィチらしいオーケストレーションの薄さが、散漫な印象になってしまう箇所があるのが惜しい。中間のスネアのソロはかなり遅め。ドライヴ感は皆無でコテコテに聞かせる。このテンポでの演奏は管楽器奏者には極めてきついと思う。しかしさすがはソビ文。よく耐えた。当然、聴いている方もかなり疲れる。各楽器とも強烈な音を出すのだが、ティンパニの音が他の打楽器と比べ少し遠いのと、銅鑼の音が高めで軽いのが残念なところか。

N.ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団

1996.12 Deutsche Grammophon

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このディスクの録音では、2番より3番が上かと思われる。ヤルヴィはソビエト出身の指揮者で、ちゃんとロシア魂を受け継ぐ者ではあるのだが、こういったプロパガンダ的歌詞を持つ曲に対しても冷静に取り組んでいるようだ。過剰に反応せず、アッサリとまとめている。やはりエーテボリのスネアは心地良い。この曲に限らずヤルヴィの素晴らしいところは、そのテンポとバランスか。合唱も決して絶叫したりはしないが、真面目で凄みがある。

コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

1972 BMG

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合唱部分が秀逸。豊かな声量で、迫力も十分。オケも好演。スネアのソロが良い。録音のせいもあるだろうが、ところどころで音が薄くなるのが残念。

アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

1992.03 DECCA

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硬質で直線的な響きが魅力的。まるで吹奏楽の演奏を聴いているかのよう。大太鼓はわざわざ手なり足なりでミュートしたような打撃音。ティンパニもヤマハ系の音色に感じる。なんだか嬉しくなってしまう。スネアの自己主張も激しい。全体的には、その響きの薄さゆえか、若干チープさが漂う。が、この曲にはこれぐらいの安っぽさがあってもいいか。スネアのソロ部分はテンポが遅くもたつくのが残念。

スメターチェク指揮 プラハ放送交響楽団

1974 PRAGA

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全体的な評価は決して高くはないのだが、その暴力的な演奏は比類ない。こういうスタイルでの演奏を求めるなら、このスメターチェク盤が良いだろうと思う。たこさんは四つか三つか迷うところだが、スネアが好みではないため三つにしておく。当サイトのレビューでは原則的にたこさん四つ以上のディスクしか取り上げていないが、スメターチェクの3番は他とのアプローチの違いが顕著であり、名盤と呼ばれるべきであろうと思い加えておいた。