交響曲第2番 ロ長調 作品14 「十月革命に捧げる」

キタエンコ指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

2004.07 CAPRICCIO

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これがショスタコの2番だ!その真実の響きを聴かされた気分。それはSACDの超高音質の成せる業かもしれない。この音質で2番が聴けるだけでも幸せである。演奏機会がほとんどないだけなく、ショスタコーヴィチの交響曲の中でも特に録音が少なく、聞き比べの機会に乏しい。見てみたまえ、このページの惨状を。ここで紹介しているディスクもほとんど全集からの一枚じゃあないか。名演で優秀録音を探すなんて不可能に思われたが、ようやく真打登場である。冒頭の大太鼓の深いトレモロの音色に度肝を抜かれるが、ウルトラポリフォニーでここまで明確に各楽器の音が聴こえてくるなんて!これはもう、凄すぎる。この音質で聴いて初めてわかってくる部分もある。若き鬼才の凄まじいオーケストレイションが魅力的な交響曲だ。音質の良さばかり書いてしまったが、演奏内容が真実素晴らしい。トロンボーンやチューバなどが強烈な音色を聴かせるのはこの全集の特徴。けれど決してがならずにコントロールの効いた造形を見せる。小難しくドロドロと歌うような部分も少なく、見通しも良い。ピアニシモからフォルテシモへのダイナミクスは、録音の良さも手伝って感動的なまでの幅。サイレンは、音量はあまり出ないものの空襲警報のような不吉な音色だし、合唱も明瞭な声質とドラマチックな歌い込みで単純なまでにぐわっと盛り上がる。シュプレヒコールは「レーエニン!」と若干伸ばしているものの、バシッと決まって爽快感さえ覚える。

M.ショスタコーヴィチ指揮 プラハ交響楽団

2005.12.06-07/Live SUPRAPHON

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なんだかスゴイぞ、この演奏は。合ってるんだか合ってないんだかようわからんが、スゴイ迫力だ。で、サイレン!!怖い!!ホラー映画だよこの音。ホント、超ビックリしました。ドキドキが止まりません…。何か不吉なものに追い掛け回されるような…。そんな恐怖のあとに現れる合唱のなんと美しいことよ!素晴らしいじゃないか、マクシム。最後の伸ばしもスゴイしなぁ。このテンション。こんなに激しい2番は聴いたことがない。確実にナンバー1だ。でも、何だかサイレンがあまりに怖いので、繰り返して何度も聴きたくないような…。

ロストロポーヴィチ指揮 ロンドン交響楽団

1993.02 TELDEC

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ロストロの2番と3番は、全集中でも抜群のドライヴ感。オケの鳴りが素晴らしい。ロンドン響のドラマティックでいてクールな、冴えた響きが非常に良い。バシバシと決まる打楽器群も気持ち良い。鋭く突き刺さるような鋭利な音が素晴らしい。それでいて、きちんと響いて広がりを見せる。オケの上手さを十分に堪能できる。ロストロのテンポ設定も少し速めで心地良い。ウルトラ・ポリフォニーはもう何だか訳がわからない現代音楽状態だが、ドロドロとさせずにスッキリと通り抜けていく。ソビエト臭を丸出しにした演奏も面白いだろうが、こうした現代曲的なアプローチの方がむしろショスタコーヴィチの意図したところかも知れない。残念なのはサイレンの音が聞こえないことか。

ハイティンク指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

1981 LONDON

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ハイティンクのショスタコ演奏は純器楽的と評されることが多いようだが、果たしてそれはどこで判断してのことなのだろう。実際にハイティンクがショスタコにどういうアプローチをしたかは、本人にしか知りえないところだ。純器楽的、イデオロギー的、標題的、様々な便利な言葉があるが、ショスタコーヴィチの言を借りるならば、音楽以上に音楽を説明できるものはないのであり、結局のところ、聴き手に全ては委ねられている。「十月革命」というコテコテのタイトルと、「レーニン」のシュプレヒコール付きのこの第2番だが、ハイティンクはヴォルテージの高い演奏を聴かせる。ウルトラ・ポリフォニーの勢いも、バリバリと鳴る管楽器も大変素晴らしい。格調のあるハッキリとした真面目な演奏で、ハイティンクの全集の中でも高く評価されるべきであろう。ちなみにシュプレヒコールは「れ~えにんっ!」という感じでいまいち気合いが感じられない。81年の西側の演奏だから…?と思ったりすると、それが純器楽だの標題だのという話になるのでやめておこう。うむ。

ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団

1984 BMG

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少し遅めのテンポだが、決して緩慢にならず引き締まった演奏。各楽器ともよく鳴っている。いわゆるウルトラ・ポリフォニーの部分はテンポが遅いおかげか、各楽器がクリアに聞こえ曲の中身がよく見える。スネアはやはり大音量。ロールの頭や最後に強烈なアクセントを効かせるのはソビ文の特徴か。しかし残念なのは、この曲にはもう少しキラキラした透明感がほしいということか。このゴテゴテした、聴くだけで疲れる演奏は、シャープな響きにはかなり遠い。ラストのシュプレヒコール、「十月革命、コミューン、レーニン!」の絶叫度が素晴らしい。さすが文化省の人々!こうでなければ!文化省響が叫ばなくてどのオケが叫ぶんだよ、と。やはり「レーニン!」はあまり伸ばさずに短めに叫ぶのが良いと思う。少し間を置いての打楽器も雰囲気が出ている。また、最後の一音とその余韻も素晴らしい。

コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

1972 BMG

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録音が古く、合唱などがこもって聞こえるのが残念だが、それでもこのただならぬ雰囲気はまさにショスタコ。ウルトラ・ポリフォニーは速めのテンポで突入、現代的な世界観を見事に表現。特に最後のシュプレヒコールの圧倒的な音圧は凄い。例の箇所は「れえええええええにん!」という感じで「え」の部分をかなり伸ばしている。「にん」は短い。その後、太鼓がゆっくりと「ダン、ダン、ダン」と重く入る。標題的というよりは、交響的(交響曲であるから当然なのだが、2番は演奏時間にしても楽章構成にしても、最後の合唱にしても非常に交響曲らしくないので)。

ブラジュコフ指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

1965.11.01 Russian Disc

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一部で根強い人気を誇るブラジュコフのショスタコーヴィチ。特に2番は秀逸で、ライヴならではの緊張感と迫力に包まれた演奏。録音は良いとは言えないが、60年代のソビエト録音にしては良好。また、二軍といえどレニングラード・フィルの響きは硬質で、ショスタコーヴィチには実によく似合っている。こうしたギスギスした録音状態も、それほどマイナスにはならない。合唱部分より前は、張り詰めた緊張感と強烈な音色がそれらしい雰囲気を作っているのだが、いざ合唱が始まるとややのっぺりとした凡庸さを感じさせる。シュプレヒコールは歯切れがよく、「レーニン!」は短くバシッとキメてくれる。やはり東側の演奏は良いですなぁ…。

アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

1989.01 DECCA

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パリッとした「軽やか・華やか・爽やか」な響きが何とも楽観的で、ショスタコらしくないと言えばそれまでだが、これはこれで味わいのある一枚。あまりこの曲に暗い政治的なものを求めるのもどうかと思うし、これぐらい明るくていいかも知れない。各楽器とも十分にゆとりのある音色でこのキツイ曲を聴かせ、ロイヤル・フィルってやっぱ凄いな、と思わせる。

N.ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団

2000.08 Deutsche Grammophon

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ヤルヴィのショスタコ全集がこのディスクで完成。CHANDOSとDGをまたいでの完成である。分厚い解説書を付けてBOX仕様での発売を望むが、それは難しいだろう。録音も優秀、トラック割りも親切、そして国内盤という、2番・3番のディスクとしては珍しい一枚。エーテボリは、決して弱いオケではない。確かに未だ知名度の低いオケではあるが、そのパワーは凄まじい。特に打楽器の好演ぶりは、ヤルヴィが打楽器奏者出身の指揮者ということを差し引いても充実感にあふれている。サイレンは「ぷい~」と情けなくとも大音量。さすがに、ロンドン響やソビ文と比べると管楽器の鳴りがもの足りないが、それでもヤルヴィの絶妙なテンポ感で演奏をぐいぐいと引っ張っていってくれる。ただ、最後の「レーニン!」が「れえ~えにい~ん」という感じで間延びしているのがどうも…。