交響曲第15番 イ長調 作品141番

ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団

1983 BMG

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ショスタコのラスト・シンフォニーは録音こそ少ないが名盤は多い。ザンデルリンクやロストロポーヴィチ、ヤルヴィも素晴らしい。ソビエト勢ではコンドラシンもムラヴィンスキーも秀逸な録音を残している。しかし、ロジェヴェン盤にはそれらを凌駕する圧倒的な魅力を感じた。ロジェヴェンも15曲目最後にして、こういった表現なのか…(録音年代からすると最後ではないのだが)。何と深みのあることか!いわゆるロジェヴェンらしくないからと言って、小ぢんまりとまとめたわけでは決してない。同時にいつもの爆裂指揮者ぶりも発揮しているのだ。金管・打楽器は破れんばかりの大音量である。しかし何より!!!哲学的境地についに達したかに見える驚くべき美しい(そして洗練された)音色が素晴らしい。15番の解釈にもよるが、これは一つの完成形であろうかと思う。ショスタコーヴィチにこの演奏を聴いてもらいたかった。

ザンデルリンク指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1999.03.16/Live BERLINER PHILARMONIKER

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1999年のベルリン・フィルとのライヴより。自主制作盤。ついにここまで来たか、というザンデルリンクの到達点のごときショスタコーヴィチ15番、その理想形と言ってもいい。もちろんライヴゆえの瑕はあるが、それを差し引いても素晴らしい演奏。ため息が出る。ものすごく優しい響きに包まれていて、この曲がショスタコーヴィチのラスト・シンフォニーであることを考えると、涙が出そうになる。ロッシーニの引用なんて、まさに子供の頃の思い出に他ならないが、おもちゃ的感覚に満ちているのに騒々しくないのは、これがあくまで回想によるものだからだ。忙しなくあちこちでチャカチャカと鳴るのがこの曲(特に1楽章)であるが、ちっとも煩わしくない。静かなのである。しかしそれでいて気の抜けたヘボい音なんて一つもない。2楽章の強奏部のこの迫力は、いったいどこから出てくるのか。ザンデルのショスタコ演奏に言えることだが、例えばロジェヴェンのような狂気的、凶暴な響きとは180度違う方向の音色を出しながらも、同じことを表現しているのだ。つまり、この一見優しい響きの中に、あらゆる感情が込められていると感じる。それは理論的な部分でどうこういう問題ではなく、聴いてみればわかる。ヴィブラフォンの響きがこうもオーケストラに溶け込むとは。3楽章の悪戯っぽいショスタコ特有のリズムも、どこか引きずるような重たいテンポになっているが、まるで夢の中にいるような幻想的な空気に満ちている。真骨頂は18分33秒もかける第4楽章。素晴らしい。…言葉を失う。

ロストロポーヴィチ指揮 ロンドン交響楽団

1998.10.28/Live ANDANTE

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1998年のショスタコーヴィチ・フェスティバルからの録音。同じ顔ぶれでの全集盤との比較をするまでもなく、研ぎ澄まされた緊張感に満ちた演奏で、ライヴゆえのミスに目をつぶればほとんど完璧と思えるような濃密な演奏。録音状態も非常に良く、その生々しい大音響には耳を奪われる。偏執狂的なまでの細部へのこだわりと、いかにもロストロポーヴィチらしい深刻なスタイルが良いかたちで表れた名演。ロストロポーヴィチのショスタコ録音の中でも一、二を争う魅力。

ロストロポーヴィチ指揮 ロンドン交響楽団

1989.11 TELDEC

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劇的で、湿った感じがとても良い。特に終楽章の叫びは凄まじい。ぶわ~っと大音響が鳴る。ロジェヴェンが外的志向なら、ロストロは内的。その病的なまでの緊張感に満ちた雰囲気は、ロストロポーヴィチならでは。問題の打楽器パートも、とことことよく響くマルカートな音色。

ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

1976.05.26/Live Victor

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やはりムラヴィンスキーが最も素晴らしいショスタコ指揮者の一人であることに変わりはない。鋭く研ぎ澄まされた演奏には、哲学的なものが見え隠れしている。盟友ショスタコーヴィチの死後のライヴ録音であり、ムラヴィンスキーの心中はいかなるものだったのだろうか。ムラヴィンスキーは次のような言葉を残している。「一生で最も重要な出会い…ショスタコーヴィチとの出会い。最も感銘を受けた音楽…ショスタコーヴィチ作品。演奏活動において最も大事なこと…ショスタコーヴィチ作品の研究。指揮者として最も困難なこと…ショスタコーヴィチの交響曲初演を準備したときの生みの苦しみ、障害、そして抵抗」

ザンデルリンク指揮 ベルリン交響楽団

1978 BERLIN

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この曲の深みを見せた名演。ドイツ・オケらしい重く深い音での演奏は、ロジェヴェンやムラヴィンスキーとはまるで違うアプローチだが、これはこれでこの曲の一つの姿だろうと思わされる。秀逸なのは終楽章コーダ。これは素晴らしい。私は、これは死へとつながる人生の時を刻む音と考えるが、ザンデルリンクのまろやかなのにどこか冷たいスネア、ウッド・ブロックの音色はまさにそのもの。

ザンデルリンク指揮 クリーヴランド管弦楽団

1991.03 ERATO

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これまでのザンデルリンクのショスタコーヴィチ、という印象からやや離れる感があるのは、オケがクリーヴランドだからだろうか。比較的硬めの音でカツカツと聴かせるが、ものすごく丁寧で密度の高い演奏。乱暴な部分は皆無。ジャケットのザンデルリンクが渋い。マーラー(9番)と併録という珍しいディスク。

M.ショスタコーヴィチ指揮 ロンドン交響楽団

1990.08 Collins

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さすがに初演者だけあって15番の出来は他とは違う。ロンドン響の技術的レベルの高さも相まって、張りのある演奏となっている。打楽器は深みのある綺麗な音を響かせている。しかしながら、重要なスネアはもう1ヴォリュームほしいところ。どうも全体的にオケの中に埋もれている感がある。ショスタコの打楽器に与えられた役割とは、決してオケの中に溶け込むような種類のものではない。ソロ楽器としてハッキリと自己主張して鳴らさなければならないはずだ。

コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団

1974 BMG

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強奏部でもう一つ迫力がほしいところだが、それでも全体的にはしっかりとした演奏。よく組み立てられているし、速めのテンポ設定のわりに細かいところも丁寧だ。1楽章のせせこましい感じなどは、他の録音では聴けないだろう。

ケーゲル指揮 ライプツィヒ放送交響楽団

1972.11.7/Live WEITBLICK

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恐怖感漂う深い音色が何より魅力。ウィリアム・テルはどこか不気味に響き、純粋な狂気を感じさせる。全楽章を通してそのドロドロとした不穏な空気が素晴らしい。深く淀んだような大太鼓の鈍い音色も良い味を出している(それは交響曲第5番でも同じことが言える)。ティンパニとのバランスも良いのだが、スネアは若干浮いている。例のカタカタも乾きすぎている。強奏部でのオケ全体の咆哮はすごい。がなり立てることなく、広がりのある音で大音響を作り出している。ところで、これは他の指揮者と比べても極めて初期の録音で、マクシムによる初演の10カ月後。貴重である。

M.ショスタコーヴィチ指揮 プラハ交響楽団

2006.03.08-09/Live SUPRAPHON

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さすがに15番は上手い。聴かせどころというか、力の入れ具合も心得ていて、ドーンとオケが鳴ると感動してしまう。惜しむらくはオケの技量か。ラストの雰囲気など素晴らしいのだが、やっぱり全体的にアンサンブルがとっ散らかった印象は拭えない。トム・トムの16分音符がカチッと決まらないのはかなり苦しい。

N.ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団

1988.09 Deutsche Grammophon

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ヤルヴィがグラモフォンに移ってからのごく初期の録音。これといった特徴はないかに聴こえるが、よくまとまった演奏。ショスタコーヴィチは古典の流れを汲む正統派シンフォニストの末裔であると改めて実感させられる。

アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

1990.11 DECCA

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パリパリとしたロイヤル・フィルの響きが美しい。決して大げさにはならず、淡々と静か。しかし芯のある力強い演奏。