交響曲第12番 ニ短調 作品112 「1917年」

ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

1984.4.30/Live Victor

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ムラヴィンスキーの演奏の前では、12番にまつわる世評など何も関係ない。これほどまでに感動的な曲にすることができるのはムラヴィンスキーだけだ。テンポは旧録音と比べると遅め。その分、一音一音しっかりと歌いこまれ、特に3楽章から4楽章にかけてのスローテンポなどには、ムラヴィンスキーの指揮芸術の到達点を見ることができる。このCDの一連のシリーズは「ムラヴィンスキーの真髄」と題されているが、まさにその通り。この演奏に、もはや11番の続編であるとか、十月革命を扱った標題音楽であるとかいうのは通用しない。レニングラード・フィルの金管全開、打楽器炸裂、緻密な弦、切り裂く木管、音色に関してはまったく非の打ちどころがない。ただ一つ残念なのは、4楽章後半で事故が起き、大きくアンサンブルが乱れる箇所があることか。

N.ヤルヴィ指揮 エーテボリ交響楽団

1990.08 Deutsche Grammophon

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11番に続いてそのまま聴きたい。打楽器群によるリズミックな面白みが十分に堪能できる演奏。強打しているのに音が安定しているのは、俯瞰した冷静な技術そのものと思える。理想的な打楽器セクションの動きを聴くことができる。そして深みのある音が非常に心地良い。バランス感覚も素晴らしく、特にティンパニには目を見張るものがある。ショスタコーヴィチの演奏では決して陥ってはならない、いわゆる「オケに合わせるティンパニ」ではなく、「ティンパニに合わせるオケ」という構図が明確であるところもグッド。だからこそ打楽器の音は決して丸くはならず、そしてまた薄くもならない。これぞ打楽器のお手本のよう。なお、グラモフォンよりヤルヴィの11番と12番、さらに「十月革命」、「ロシアとキルギスの民謡の主題による序曲」、「ハムレット」、「黄金時代」まで収めてた廉価CDが出ており、入手も容易だし、私としては最も薦められるショスタコCD。幸せな一枚。断言する。

キタエンコ指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

2003.10 CAPRICCIO

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キタエンコ全集の中で、2番と並んで最も評価したいのがこの12番。偶然にもレーニンを主題とした交響曲ではあるが。迷いのないテンポで突き進む1楽章をはじめ、とにかくひたすらにカッコイイ。12番は駄作なんて言う向きも、隠された暗号が云々と言う向きも、とりあえず何も考えずにこの録音を聴いていただきたい。カーステで大音量で流しながら夜の海岸を飛ばしてみるのもいいだろう。いいじゃないか、こういうのがあっても。当時のソ連じゃあ、そんな聴き方はできなかった。ショスタコさんもびっくりだ。3楽章後半から4楽章にかけてなんて、もう大興奮。坩堝。る・つ・ぼ。打楽器もどかんどかんと打ち鳴らされるし、しかもそれがすごい録音で銅鑼や大太鼓なんて今まで聴いたことのないような音色。深くて、つぶも立っていて、芯の音と長い余韻がちゃんと聴こえる。ティンパニの激しい打ち込みも魅力的だし、トライアングルはよくぞここまでクリアーに聴こえるものだと感心してしまう。リズムを叩かせている部分などは、本当にライヴの感覚。圧倒的な音響と演奏効果に、容易には言わないこの言葉が思わず漏れる。…感動。

ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

1961 Victor

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1楽章の激しさなどは、84年盤よりもこちらが上。スネアやシンバルの鋭い音がたまらない。演奏の内容もさることながら、録音も非常に良い。61年録音であるが、古さはほとんど気にならない。ソビエト異例の超鮮明録音。私は永らくこの61年盤を84年盤だと勘違いしていたぐらいで、新盤よりも音は鋭く、冷たく機械的。テンポはかなり速く、1楽章は鬼気迫る大迫力。スネアの音色はこちらの方が硬質で曲に合っている。…しかし、ところで、やはり4楽章で事故っていますが、マエストロ?…ジンクスを感じざるにはいられない。

ハイティンク指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団

1982 LONDON

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洗練され、研ぎ澄まされた純器楽的交響曲としての12番。緻密に組み立てられた立派な演奏。11番同様に冷たい印象さえも受けるのは、その徹底された細部へのこだわりゆえだろう。引き締まった響きがとても美しい。オケの技術力も素晴らしく、エーテボリ響に不足感があるならばこちらを薦めたい。非常にしっかりとした造形で、安心の一枚である。ハイティンク、やっぱり好きだぜ。

ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団

1984.1 BMG

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冒頭から重い音で聴かせてくれ、いかにもソビ文らしい金管の咆哮も期待を裏切らない。ただ、1楽章の遅いテンポがしっくりこないか。曲の内容からいっても、もう少し聴きやすくてもいいはずだ。全体的にスネアも少し転んでいて、妙に難しい楽譜を叩いているような印象を与える。ラストの大音量などはニヤリとさせられてしまうのだが、この曲にはどうしてもムラヴィンスキーの決定的名演が存在してしまうので、それと比べてしまう。ロシア系のサウンドを求めるならば。

アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

1992.04 DECCA

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1、2楽章はもったりとしていて野暮ったいが、3楽章後半になると俄然勢いが出てきてこの演奏の真価を発揮する。4楽章では各楽器ともわんわんと鳴り響き、大迫力。打楽器も健闘していて、特にティンパニ(超強烈!)、大太鼓が良い。ラスト数小節にかけては、壮絶とも言えるほど。ここまで鳴らしきる演奏も多くはないだろう。

ギーレン指揮 SWR交響楽団

1995.09 ARTE NOVA

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ミシミシとオケ全体が打ち震える、密度の高い演奏。ギーレンらしい、充実のみっちり感。音色そのものはロシア風ではないものの、管楽器の突き刺すような音や、独立部隊として曲中を縦横無尽に駆け回る打楽器群といい、抜群の雰囲気を持つ。ともすると4楽章などで楽観的な薄い音楽になりがちだが、ギーレンはあくまで真面目。真面目すぎると言ってもいい。高めのパラパラと鳴るスネアも特徴的。終楽章のロールの激しさには思わずニヤリ。スターリンの音型EBCも重々しく響く。

ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団

2004.04.26-28 EMI

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細部まで丁寧に演奏されているし、強奏部は感情的にならないで極めてクールに通り過ぎる。ある意味では「普通」の演奏。いたって普通。スコアから想像できる範囲で優等生的な内容。で、その普通さが上手いってことなのかもしれない。ヤンソンスのショスタコ録音の中でも一、二を争う演奏だと思う。それとこのシリーズ、ジャケットがカッコイイのう。

ロジェストヴェンスキー指揮 フィルハーモニア管弦楽団

1962.09.04/Live BBC

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後のソビエト文化省響とのずっしりとした演奏とは異なり、全体を通してかなり速めの殺人的演奏。木管奏者とか大変だろうに。ロジェヴェンのライヴは観客へのパフォーマンスが激しくて面白いのだが、この演奏も素晴らしく聞き応えのする爆裂ライヴとなっている。打楽器も節操のないシンバルをはじめ健闘しているが、スネアが間違えた上に適当にごまかしながら終わる。これには笑うしかない。ぷぷぷ。だがしかし、その推進力を買う。