交響曲第1番 ヘ短調 作品10

バーンスタイン指揮 シカゴ交響楽団

1988.06/Live Deutsche Grammophon

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バーンスタインとシカゴ響が組んだ伝説ライヴ。メインプログラムは7番だが、この1番も圧倒的な存在感を示す必聴の録音。解釈は他の録音とは異なるバーンスタイン独自のロマンティックなもの。2楽章の金管の鳴りがゆとりがあって心地良い。さすがシカゴ響。ピアノも実に安定している。やもすると転びまくる難易度の高い曲ではあるが、アンサンブルも乱れることなく、難なくこなすシカゴのパワーが凄い。打楽器も全般的に硬質で音量も大きめ。ドン!バン!と決まる大太鼓とティンパニが気持ち良いディスク。

チェリビダッケ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

1994.06.02-03/Live EMI

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まず何よりも注目すべきは、ティンパニ。強く言っておきたい。ティンパニが上手い。ペーター・ザドロと思われるが、これは凄い。そのまさに一点しかないタイミング、音色、特徴的なフラ打ち。爆音を出して大騒ぎするタイプのティンパニではなく、確かな技術に裏打ちされた高いセンス。それでいて強い自己主張。ショスタコ1番ということもあり、ほとんどティンパニ中心の曲に聴こえる。オケの中心がティンパニにある。この感覚を味わえる演奏はそう多くはない。打楽器では、他にトライアングルが素晴らしい。ところで、チェリビダッケ晩年のミュンヘン・フィルとの演奏が、このように綺麗な録音で聴けることが素晴らしい。仄暗い中に温かみを感じさせる造形と、豊かで深い響きはチェリビダッケならではのもの。聴き入っているとショスタコじゃない音楽を聴いているような不思議な錯覚に陥るが、これはチェリビダッケがこの曲を自分のものとしている証だ。チェリビダッケにしては普通のテンポだが、流れるようなオーケストラとピアノ、そしてその中心にあるティンパニは一つの世界を作り出している。素晴らしい演奏だ。なお、併録のバーバーの「弦楽の為のアダージョ」が心に沁みる感動的な超名演。「ブラボー」と涙を流しながら言いたい。…けど、ショス1のあとの拍手に収録された間の抜けた「ぶらああぼおお」というへなちょこ声にはガックリ…。

テミルカーノフ指揮 ソビエト国立交響楽団

1966.12/Live Brilliant

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オランダの廉価レーベル「ブリリアント・クラシックス」からとんでもないBOXが登場だ。その名も「ユーリ・テミルカーノフ・エディション」!テミルカーノフのソ連時代のライブ音源を集めたBOXで、その充実度たるや異常。10枚組みで5500円だったが、1枚でも5500円以上の価値はあるだろう。その中から交響曲第1番である。この曲に限ったことではないが、テミルカーノフのソ連時代のライブは凄い。本当に凄い。「爆演」とかそういうレベルではない。疾走感も爆発度も尋常ではなく、そのはじけっぷりを讃えて、私はあえてこう呼びたい、「爆走のテミルカーノフ」と!…というわけで、この1番もそれこそたこさんマークを6個にしようか迷ったほど面白い演奏なのだが、録音の悪さとミスを差し引いてこの位置に収まった。スヴェトラーノフが振るソビエト国立響とはひと味もふた味も違う面白さに溢れている。スヴェトラの持つある種の温かみとか柔らかさ、また重さや暗さというものはない。冷たくはないがもっと洗練された響き、絶妙なバランス感覚、そして何より、脱線してるのにどこまでも真っ直ぐに突き進む爆走列車とでも言うべき圧倒的な推進力を持っていることが魅力だ。弦はガリガリと凄まじい音を出しているし、金管・打楽器は言わずもがな。録音の悪さゆえに木管の響きが遠いのは残念。なお、当ディスクのカップリングの5番は、かの名演81年ライブ。こんなに面白いディスクが他にあろうか。

ザンデルリンク指揮 ベルリン交響楽団

1983.06 BERLIN

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これは果たしてショスタコなのか!?と思うほど、聴き慣れたサウンドとは異なる重いザンデルリンク風ショスタコ。金管が叫ぶことは決してなく、2楽章の繰り返し後もどんと重くずっしりした音で広がりをみせる。しかし、こうした解釈もありだという説得力に満ちた好演。角はないのに、それでも野暮ったくならないこのパワーは、ザンデルリンクならでは。ショスタコ演奏の一つの完成された姿を垣間みることができる。15番とセットで聴きたい。

キタエンコ指揮 ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

2004.07/Live CAPRICCIO

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実に堅実に演奏するキタエンコ。金管低音が強めのバランスながら大変綺麗で、打楽器も伴奏に徹しながらも職人的な仕事を成し遂げている。偶数楽章の炸裂度も強力。テンポ感覚も申し分ない。いま一つ個性には欠けるものの、この高音質と完成度には文句を言うところがない。キタエンコ全集を聴き始める最初の1枚としては、十分すぎるほど価値がある。この後に14もの交響曲が控えているとなれば、わくわくせずにはいられない。子供の頃に玩具を買ってもらうの待っている期待感、そんな懐かしい感覚が甦ってきた。

デュトワ指揮 モントリオール交響楽団

1992.05 DECCA

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デュトワにショスタコというのもあまり似合わなそうな気もするが、1番に関してはデュトワの持ち味が十分に生かされた名演となっている。モントリオール響も、シカゴ響やロシア・オケとはまた違ったシャープで強烈な音を聴かせる。メリハリがあり、決めどころも外さない。勢いも十分にある。そして、何よりも綺麗。キラキラと音楽が流れていく。こういうショスタコも悪くない。デッカの録音も非常に良い。…デュトワとモントリオール響のコンビ、大好きです。デュトモン。

スクロヴァチェフスキ指揮 ハレ管弦楽団

1996.11.01 HALLE

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オケは上手いし、表情付けも良い。実に硬派。これは買いだ!と試聴機で聴いてびっくり。スクチェフは他に10番も録音しているので、HALLEからの自主制作盤をぜひ。…スクチェフ?スクスキ?ミスターS?

バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

1971.12.14 SONY

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シカゴ盤を取るか、NYP盤を取るかは好みの分かれるところだが、どちらも素晴らしい演奏。手兵NYPとの演奏は、しっかりと地に足の着いた堅実な演奏でありながら、極めてバーンスタインらしいパッションがある。録音が古いせいもあるだろうが、ざらざらとした手触り、ギラギラとした攻撃性が魅力。

ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団

1984 BMG

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基本的にソビ文のスネアは、スナッピが緩めでばしゃばしゃした音を鳴らしている。この録音では特にそれが目立つ。それが1番の雰囲気とは微妙に合わず、残念なところ。2楽章はいつも通り金管が炸裂し心地良い。ピアノが少し転ぶようなところがあるのと、細かい部分での縦線が合わないので、少し雑な印象を与える。しかし、さすが4楽章になるとこのコンビの本領が発揮される。ティンパニのソロも大音量で割れている(T◎T)安っぽいヘッドの音がたまらんですな。

ショルティ指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団

1991.09.18,19,21/Live DECCA

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ジャケットは相変わらず全然センスのかけらもないが(8番のジャケットみたいなのを望みたい)、内容は良い。ちょっと珍しいコンセルトヘボウとのライヴ。オケはさすがに上手いし、シカゴ響並みのパワーもある。ショルティのショスタコーヴィチにはあまり良い録音がないが、その中においてこの1番はなかなか。流麗なピアノに、確実なアンサンブルの造形。バーンスタインの新盤と比べて聴くと面白いかも。

アシュケナージ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

1988.11 DECCA

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カップリングの6番同様、極めてオーソドックスな解釈。相変わらずロイヤル・フィルのホルンには感心してしまうが、全体的には力強いというよりも綺麗な方向にまとめ上げられている。ショスタコらしい毒気があまり感じられないが、まだ作品番号10番。サワヤカな青春時代のショスタコーヴィチには、こういう表現も良いだろう。

N.ヤルヴィ指揮 スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

1985.05 CHANDOS

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録音が素晴らしく、大太鼓やティンパニなどの低音をきちんと拾っているのが嬉しい。しかし、全体像はどうもぼやける。ヤルヴィの疾走感あふれる他の録音とは異なり、重く鳴らしているので、もっさりとしてしまっているのも確か。

バルシャイ指揮 ケルンWDR交響楽団

1994.09.30-10.3 Brilliant

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やや雑然としたアンサンブルの甘さがあるにはあるが、暴力的、大げさな表現を避けて、きちんと綺麗に整理された演奏。曲そのものが持つ瞬発力をそのまま生かした名演と言える。